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LINEに関心が集まっていますが・・・ こどものネット利用問題を改めて見直す

こどものネット利用に関して、新聞もテレビも、保護者にヒアリング・アンケートを行ってもそうですが、日本国内はLINEの利用への関心が高いです。これは圧倒的です。

保護者自身もLINEを使うようになったり、問題になる事例も具体的で想像がつく。こどもたちもコミュニケーション手段として利用し始めている。また、個人間のやり取りのため、直接の対策が難しい。新聞やTVなどのメディアで、「LINEを使っていて~」、「~はLINEを使っていた。」などの報道が目立つ。などが、関心を高める要因になっていると考えます。

危険な状況の発生数、および発生(直面)する可能性の高さという観点では、これこそ、外から中身が見えない、提供事業者もユーザに無断で見られない、という理由で、把握するのは難しいです。しかし、『直面する可能性のある危険の種類』という観点で整理してみると、こどものネット利用に関する問題は、LINEなどの無料通話・メッセージアプリなどのコミュニケーションアプリに限らないことは明らかです(このあと、整理した内容について説明します)。むしろ、直面する危険の種類としては少なく、ごく一部です。これらのアプリ以外の場所で、もっと様々な危険に直面する可能性があります。

だからこそ、H26年度、政府は48億円の予算を割いて、「ネットパトロール」に力を入れているわけです。(リンク先はPDFファイル。H26年度のネットいじめ対策予算です。スクールカウンセラーの拡充などについても、対象に含んでいます。)
ネットパトロールは、ネット上から、児童や学校に関する不満やいじめ、出会い系、犯罪、個人情報漏洩についての書込み、投稿を探しだし、削除対応・通報などを行うものです。このネットパトロールについては、後日解説したいと思っています。

あくまで種類、という観点ですが、改めて見直してみましょう。(LINEやカカオトークなどの無料通話・メッセージングアプリなどのコミュニケーションアプリ、というのは長いので、これ以降、「コミュニケーションアプリ」と略します。)

 

 

コミュニケーションアプリで直面する危険

特徴として考えられるものは、『クローズ』環境である、ということです。
基本的にやりとりは、指定した、もしくは予め指定したユーザ間でのみ行われます。利用者本人たちが外へ伝えようとしない限り、その中でのやりとりは第三者から見ることはできません。
また、逆に、『外からは見えないはず』という思い込みが、被害を生む場合があります。一度共有してしまい、他人の手に渡ってしまったデータの拡散は、止めることができません。拡散に気づいたときには、もう収拾不可能ということもあります。こうなってしまった場合、舞台はコミュニケーションアプリで直面する危険を超えて、『オープン』なインターネット上での危険、という話になってしまいます。

下記の表は、コミュニケーションアプリで直面する危険と、その説明についてまとめたものです。

危険の種類 説明
ネットいじめ コミュニケーションアプリの危険性について、最も話題にのぼるものが、『ネットいじめ』だと思います。「LINEはずし」、「既読スルー(KS)」、「嫌がらせ連続投稿」などのキーワードが有名です。
個人情報漏洩 もともと知り合いのみで構成する友人関係であれば、名前と住所などはあまり問題ではありません。クレジットカード情報を共有してしまうケースや、家族の情報を共有してしまうケースなどが発生します。
また、Sexting(セクスティング)やSelfy(Selfie、セルフィー)と呼ばれるひわいな自画撮り画像の送信などの問題も存在します。これは、リベンジポルノ、恐喝などの犯罪被害の可能性もはらんでいます。
依存 依存というと大げさかもしれません。会話が終わらない、常に気にしてしまう、といった状況になるケースが発生します。「10秒ルール(秒数は諸説あります)」という、10秒以内に返さないとトラブルにつながるという考えや、「LINE疲れ」という言葉もあります。
出会い系、および付随する犯罪被害 未成年のID検索は規制されているものもありますが、見知らぬ人と知り合う方法はいくつかあります(※1)
こういった一種の出会い系のような利用方法から、女子では性犯罪被害、男子では美人局(つつもたせ)の被害などが発生しています。また、男女ともに、恐喝の被害を受けることもあります。

(※1)この方法については、悪用の恐れがあることからここでは説明しません。

 

コミュニケーションアプリなど以外で直面する危険

特徴として考えられるものは、『オープン』環境である、ということです。
基本的にやりとりは、世界中の誰からも見えるということです。利用者本人が公開範囲を狭めたとしても、同じサービス内に世界につながる投稿手段が提供されており、簡単に世界中に拡散する可能性があります。
一度共有してしまい、他人の手に渡ってしまったデータが拡散してしまう可能性としては、『クローズ』な環境よりも、比較的高いと考えることができます。

また、コミュニケーション系サービスに限らず、インターネット上でさまざまなサービスが展開されています。検索サービス1つを取っても、こどもにとっては危険性・有害性をはらむ場合もあります。その他、ゲームやさまざまなデータのダウンロード・共有、動画視聴、最近では動画生放送なども、自由にできるようになっています。スマートフォン自体の利用も、度を過ぎれば有害です。

下記の表は、コミュニケーションアプリ以外で直面する危険と、その説明についてまとめたものです。

危険の種類 説明
ネットいじめ コミュニケーションアプリ流行以前、オープンなインターネットでは、もともと問題となっていました。ネットパトロールなどで発見することが可能ですが、容易に拡散し、加害者が増えやすく、検索・Web魚拓(ページの継続的保存)などで、すべて削除することは難しくなります。
個人情報漏洩 オープンなインターネットでは不特定多数が見ることができ、拡散も容易なため、自ずと被害規模(漏洩規模)は広くなります。
ネットいじめにも関連しており、他人が個人情報を無差別に流してしまう行為は、ネットいじめ行為の1つです。
出会い系 出会い系サイトはかなり減りました。出会い系は出会い系アプリや一般のコミュニケーションサイト(SNSサイトなど)に移っています。
出会い系アプリは監視が難しいこと、コミュニケーションサイトは会員制であるため、ネットパトロールの対象にならない場合があります(近年、コミュニケーションサイトも対象としている場合があるようです)。
犯罪誘引 犯罪を行う者から、ネット経由で犯罪に引き込まれることがあります。また、犯罪の方法など(例えばソフトの不正コピーや不正ダウンロード、不正改造など)を解説するサイトなどもあります。有害情報と言えるでしょう。
犯罪被害 ワンクリック詐欺、フィッシング詐欺、オークションなどでの不正販売など、ネット上で犯罪被害に遭う可能性があります。詐欺に遭うケースが多いですが、近年(2014初頭から)は不正アクセスによる、不正送金などの被害が多いようです(データについては過去の記事を参照)。
依存 コミュニケーションアプリでも説明しましたが、スマートフォンゲームや、スマートフォンでSNSを利用する場合にも依存するケースが存在します。
肌身離さず持つ、便利なスマートフォンが世の中のインフラデバイスになってきているということもありますが、オンラインゲームなど、既存のコンテンツでも、この危険は依然存在します。
高額課金 スマートフォンアプリのゲーム、ソーシャルゲーム、オンラインゲームなど、ゲームの分野で発生しやすい危険です。
対策が行われた問題ではありますが、ゲーム内のアイテムや、抽選制のイベントへの参加費(スロット方式、ガチャ方式)などが積み重なり、高額になるケースが依然存在します。
健康被害 依存と関連する危険です。寝不足や身体的被害(腱鞘炎など)のケースがあります。
肌身離さず持つスマートフォンを操作する時間が長くなってしまうことが大きな原因です。
悪評 ネットいじめとも関連する危険です。ネット上で悪い評判が拡散していくことです。この拡散は、オープンなインターネット上であるがゆえに起きます。評判リスク、風評リスク、と呼ばれることもあります。リアルでの行動や、SNSやブログでの記事などが発端になることが多いと言えます。しかしながら、悪評の内容がどこまで事実かどうかはあまり関係ありません。曖昧な情報なほど、広がりやすいとも感じます。本人の知らないところで心当たりの無い悪いうわさが立ち、拡散していくこともあります。
有害情報への接触 アダルト、暴力、薬物、タバコ、違法情報など、有害情報へ接触することです。インターネット上には、これらの情報がまとめられていたり、QAサイトなどで簡単に取得手段の提供を受けたりすることができてしまいます。クローズなコミュニケーションアプリ上でも提供を受けることはあるでしょうが、情報量が全く違います。
フィルタリングソフト・サービスなどで対策しやすい危険ですが、これを適用しない場合、検索やリンクなどをたどり、簡単に情報にたどり着くことができてしまいます。
炎上 なんらかの不祥事をきっかけに爆発的に注目を集めることです。非難・批判・誹謗・中傷などのコメントやトラックバックが殺到します。Twitterやブログを発端とするものが多いです。オープンなインターネットでは拡散も容易であり、注目を浴び始めたときの対処を誤まると、大炎上を招き、TVで取り上げられたり、損害賠償責任を問われることもあります。

 

まとめと対策

『クローズ』環境で利用するコミュニケーション手段と、
はじめから多数のサービスを『オープン』なインターネット環境で利用するという差が、
これらの直面する危険の種類に差を生んでいます。
つまりは、クローズなコミュニケーションアプリで接する世界より、オープンなインターネットで接する世界の方が、明らかに広く、接触が容易だということです。

LINEに注目が集まってはいますが、危険はそれだけではありません。『クローズ』環境という特徴が、良くも悪くも作用しています。ある程度守られているという点も確かに存在しますし、それを過信すると、思わぬ被害に遭う可能性があります。また、外から全く見えないということは、問題が起きた時に周りに気づいて貰える可能性がとても低いということです。これはとても危険な状況でもあります(この手のアプリで知らない人とつながることは、見知らぬ人を家の中に入れて、中から鍵を掛けてしまうようなものです)。

スマホやスマホアプリ、新しいサービスなどが出てきて、保護者の方も対策や情報収集が追い付けない状況があるかと思います。目新しく、目立つ、LINEなどのコミュニケーションアプリに限らず、危険への対策は依然必要です。
従来通りのフィルタリングや、機能制限、ウィルス対策ソフトといった対策は、これまで通り有効な面が多々あります。
SNSなどのサービスを使うことを許可した状態には、Filiiなどの『使いながら守る』サービスが有効です。

 

ご家庭でのこどものネット利用問題への対策を、いま一度見直し、コミュニケーションアプリ以外でも直面する危険に対して、いま一度対策を考えてみてください。

 

※LINEはLINE株式会社の商標です。
※カカオトークは株式会社カカオジャパンの商標です。 

 

 

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