携帯・スマホ禁止!夜9時以降 愛知・刈谷
愛知県刈谷市の全小中学校が申し合わせて、夜9時以降の携帯・スマホの利用を禁止することを、保護者に呼び掛けました。ネット上の様々な危険、特に、スマホの無料通話アプリ「LINE(ライン)」のトラブルから子どもたちを守るために、という主旨で、このような呼びかけにつながりました。
「夜9時以降」という部分がクローズアップされて伝わっているようですが、呼びかけているのはこれだけでなく、『必要のない携帯電話やスマホを持たせない』、『有害サイトの閲覧を制限する「フィルタリング」サービスを使う』という内容も、同時に呼び掛けられています。
『小中学生は携帯・スマホ禁止』という話ですが、この点自体は、全く初めての試みではありません。既にいくつかの自治体で条例化や宣言が行われていることです。今回の呼びかけで独特な点は、禁止時間帯を定めていること、もそうですが、『学校から呼びかけていること』です。学校としての考えを明確にした、ということになるでしょうか。強制力はなく、あくまで学校からの『呼びかけ』ということですが、学校が考えを明確に示したということの今後の効果は気になるところです。
既存の取組み
他の自治体でも既に行われている『小中学生は携帯・スマホ禁止』という条例や宣言。電話を持たせないことでの一定の効果はあると思います。例えば、勝手に知らない人と電話したりする、朝まで友達と電話するようなリスクは減りそうです。
ですが、『電話』だけ禁止すればいいのか?LINEなどのアプリを利用可能なiPodやニンテンドー3DSなどの携帯型ゲーム機はどうなるのか?そもそもPCはいいのか?など、さまざまな疑問も残ります。携帯持たせる持たせないは家庭の問題では?という意見もありそうです。
さらに、中学卒業まで持たせず、高校から「スマホデビュー」する危険性(出会い系被害において、高校生が半数以上を占めるという先日の記事もあります)や、防犯用にも持たせづらくなる、親が隣町までこっそり携帯を契約に行ったり、子供に、「携帯持ってることは周りには秘密」という後ろめたい約束をさせたりといった弊害も耳にします。
学校の指導はどうなる?
この種の呼びかけ・宣言をした場合、学校側でどのような指導をしていくのか、ということが気になります。
以前お話する機会のあった、ある地域の教員の方々のお話では、『自治体が携帯・スマホを持たせない方針であるため、情報モラルはともかく、リテラシ(ITの基礎知識:情報の授業等)やICT(授業等での情報機器の)活用の場面でやりづらいことが出てくる』というお話を聞いたことがあります。
情報モラルにおいては、『使うようになったときのために』、『生徒が親の立場になったときのために』という方針で教育に取り組めます。各学校で教育課程(カリキュラム)を編成する際の基準である、学習指導要領にも、「情報モラルを教えるように」と記載されています。こちらは、トラブル事例などを中心に話をすすめれば、あまり問題なさそうです。
リテラシやICT活用となると、どうしても使い方や便利な活用法を考えるため、生徒が機器や技術に興味を持ち、購入意欲が高まったり、家庭にある機器を利用したくなってしまいます。
また、1人1台というような機器の導入が難しくなるのではないかと思います。学校への機器の導入政府は2020年を目処に、小中学生でタブレット1人1台を目指しています。これに対しては、早くから取り組んでいる自治体や私立学校なども出てきてます。国外では、当たり前になってきている国もあります。ICTをフルに活用したい、前倒しで取り組んでいきたいと学校・現場の教員側が考えても、自治体が携帯・スマホの所有を禁止している状況では、ハードルは高そうです。佐賀県武雄市で行われている、家庭でタブレットを利用する『反転授業』などに取組むことは難しいと言わざるを得ません。
他にも現場では、ある種の「矛盾」を抱えたり、「矛盾」ではないという説明を何度も行い、各方面の理解に時間を費やさざるを得ない、ということがあるかもしれません。普段から忙しい教員の方々には、とても厳しい状況になっていないのか、と考えてしまいます。
『こどもの安全を守ること』は必須であり、そのための労力はやむを得ません。
あまり効果が無い上に、多くの労力を必要としたり、こどもの学習機会や興味・関心を育てる機会を棄損するような場合は、訂正の必要があると思います。今回の取組みの効果も、注目していきたいところです。