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つながる世界の歩き方

市野敬介の市野敬介的こころ(3) ~あー夏休み前…長岡の街で「常在戦場」と2020年について考える~

今回お届けする記事はNPO法人企業教育研究会の市野敬介氏によるシリーズ第三弾です。情報モラル教育に関する記事を掲載している本メディアですが、市野氏の寄稿記事は独特の視点で情報モラルに関する話題を語っていただいています。今回も独特の文章をお楽しみください。

 

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ありがたいことに、2015年から長岡造形大学で非常勤講師として週1回、論理学の授業を担当させていただいております。毎年、新潟県の長岡市まで15往復。授業のある月曜日に日帰りするのが常ですが、時には前日入りして、周辺を一人旅することにしています。

予定は立てず、当日の心の趣と観光案内所の人のお薦めで行き先を決めます。越後湯沢でハイキングしたり、かつて「チャーザー村」と呼ばれていた集落を探ってみたり、寺泊でおいしいお魚をいただいたり。偶然を楽しむ旅をしてきました。

しかし、今年は天候と自分のコンディションが良くない。そして依頼された原稿の締め切りもあり、早めにホテルにチェックインしたいなぁ…。「そういえば、5年も通っているのに、長岡駅周辺の施設に行ってないじゃないか!」と思い立ち、今年は山本五十六記念館、河合継之助記念館を訪ね歩きました。いずれも駅から10分ほど歩いた場所にあります。

 

長岡駅から徒歩10分ほどにある河合継之助記念館

 

 長岡藩・牧野家の家訓「常在戦場」

山本五十六さんや河合継之助さんの足跡や、記念館の内容はここでは記しませんが、いずれの館内にも、長岡藩・牧野家の家訓とされていた「常在戦場」の書が飾られていました。「いかなる時も、常に戦場にある心を持ってことにあたれ」という意味でしょうか。

 

この時期は、毎年、多くの小学校・中学校・高等学校・特別支援学校などから、情報モラル・セキュリティに関する講演の依頼を多くいただきます。「夏休みに入る前に指導したい」という先生方のお気持ちはよくわかります。しかし、あまりにも集中しすぎていて、お受けできないこともしばしばあります。

そして、特に多く依頼をいただくのが夏休み前の一週間です。「あー、また夏休み前ですか…」それも、全校集会として体育館で講演を、というご依頼が多い。しかし、正直申し上げて、お薦めしません。

 

SNSの中で人間関係が悪化するのも、盛った画像や自撮りの画像や動画が拡散・炎上するのも、ゲームにはまって生活リズムが崩れるのも、裏アカウントに書いたことが表に出てしまうのも、欲に目がくらんで詐欺リンクをタップしてしまうのも、”スマホの画面越しに I love you を連発するオオカミ”と現実に直接出会ってしまうのも、どれもこれも夏休み固有に発生するトラブルではなく、日常で気を付けるべきことの延長線上に過ぎないはずです。

 

道徳の時間や情報科、社会科、朝の会や帰りの会、学級活動の時間などで常日頃からご指導いただくのが一番ですし、むしろ夏休み前に指導していてはもう遅いくらいです。また、情報モラルの指導は学校教育だけの役割ではありません。保護者も、地域の大人も、日ごろからルールを作ったり、逸脱している姿を見たら声をかけたりすることが肝要。これこそ、まさに「常在戦場」なのかもしれません。

それを、児童・生徒も、授業をする側も灼熱の体育館という最悪のコンディションに囲い込んでしまうのは「意図が読み切れない  これじゃtime go by 」になりがちです。ぜひ、2学期以降でも、来年度も、常時、みんなで考える機会を作っていただけますと幸いです。

 

教材はあちこちに常在しています。例えば、具体的なトラブルや危険性を知らせたいのであれば『つながる世界の歩き方』に掲載された上條先生の記事をみんなで読んで感想を話し合っていただくだけでも、一つの題材になります。おそらく、児童・生徒と保護者、先生、それぞれの経験で感想が変わります。それを共有しつつ、今後、自分たちはどうすればいいかを考えるだけでもいいのです。

警察勤務時に見た、子ども達が巻き込まれるネットトラブル<前編>

警察勤務時に見た、子ども達が巻き込まれるネットトラブル<後編>

 

他にも、無料で活用できる映像教材があります。私の所属する企業教育研究会とソフトバンク株式会社で制作した「みんなで考えよう、スマートフォン」の映像教材をはじめ、外部の人を呼ばなくても啓発できる環境は整っています。

 

みんなで考えよう、スマートフォン

 

講演のご依頼をいただくのはありがたいことですし、いただいたご依頼には全力でお応えしたいものです。しかし、時期があまりにも集中して講師の取り合いになってしまったり、当日の環境が悪いと満足度も下がったりと、持続可能性がありません。ぜひ、学校関係者の方々に置かれましては、ご勘案いただけますと幸いです。

 

2020年までの「常在戦場」と、利便性の転換点

さて、東京2020オリンピック競技大会の観戦チケットが当たっただの、外れただので世間が一喜一憂するこのご時世、みなさん、何かお忘れではありませんか?

2019年は、ラグビーワールドカップ2019が、日本国内の各地で開催されるんですよ!

2019年は、第74回国民体育大会・第19回全国障害者スポーツ大会が、茨城県で開催されるんですよ!

オリンピック・パラリンピックの前の年でもあり、見ごたえ十分な協議会が茨城県で開催されます。大きなスポーツイベントが「常在戦場」となる目白押しの一年なんですよ!

 

と、意気込んで風呂敷を広げてみましたが、かくいう私も、名古屋の実家サイドからの「公式サイトにうまく登録できゃぁせんもんで、あんたが観戦チケットの申し込みしといてちょー」という一声で、オリンピックのチケットを申し込んでみました。

デジタル社会の世代間格差の問題が身内で発生するやるせなさに思いを馳せつつ「まぁ、どうせ当たりゃせんだろう…」と、実家サイドからの依頼だけでなく他の競技や日程も併せ、30枚分の申し込み枠をすべて活用しました。

結果は、ありがたいことに何枚か当選していました。ところが…大会の委員会から来たメールには、当選者がどこにアクセスしていいか、URLのリンクが見当たりません。それどころか、組織委員会の公式URLすら記載がありません。

 

これまでの利便性(ユーザビリティとかいう概念)重視の発想から考えると、当選メールから確認・決済のサイトに直接誘導する方がスムーズなはずですが、そうじゃない。

イベント主催者などを騙る詐欺のサイトほど、スムーズにURLを踏んでもらいたいと考えてメールが送られた結果、これまでに多くの人が被害にあわれた傾向を逆手にとっている施策です。

なるほど、こうすればテレビやラジオの番組で「URLやリンクが記載されたメールは詐欺なのでご注意を…」と、シンプルなメッセージを出すだけで伝わります。「行き過ぎた顧客第一主義」をみんなが省みる、時代の転換点なのかもしれないなぁ、としみじみ感じた次第です。

 

「常在戦場」の解釈は他にもあって…

なお、長岡藩・牧野家の家訓「常在戦場」には、もう一つの解釈があります。それは「たとえ戦場で負けることがあっても、産業・経済などを振興すれば良い」という考え方。

持続可能な産業振興・経済政策を具現化しながらも、最後は戊辰戦争で長岡を追われ、只見の地で生涯を終えた河合継之助を題材にした司馬遼太郎氏の小説『峠』が、映画『峠 最後のサムライ』として2020年に公開される予定と、記念館で教わりました。すでに長岡市をはじめとする新潟県内で撮影は終わっているとのこと。

 

「来年に向けてまた一つ、見たい映画が増えたぞ。さぁ、長岡駅前の大通りにあるコワーキングスペース『NaDeC BASE』で原稿を書こう」と、歩き出した梅雨曇りの日曜日の昼下がり。

建物の陰から、連射される銃声と「ウワー、ヤラレター!」という男性の叫び声が聞こえてきます。スマホの小さな画面に没入しているのは、2人の高校生でしょうか。彼らの居場所は、音と会話を聞けばわかります。彼らがオンライン対戦する相手を撃退して生き残る、一人称視点シューティングゲームの戦場にいることが。

うむ。これぞ「常在戦場」で、あるか。それもよかろう…。【夏休みは、時間があるからたくさんプレイできるかもしれないけど、ほどほどにしときなよ】と書いたメモを、2人の背後からそっと近づいて背中にそっと貼りつけてやろう。ふふふ。気づかれることはあるまい…。そんなことを考えてしまうぐらい、アーケードの下に座り込んでいた彼らは隙だらけだったのです。

 

『NaDeC BASE』でこの原稿に没頭する中で「なあおまえ、そんな独りでしょーもない妄想しとらんと、湘南に行ってヨシズの君でも見つけてこんかいなーー」という天の声が降ってくるわけですが、ここはまだ梅雨も明けてない日本海側だぞ、と無視をして、ホテルにチェックインさせていただくのです。

 

 

 

執筆者プロフィール

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

市野敬介(いちのけいすけ)

NPO法人企業教育研究会 事務局員
千葉県青少年を取り巻く有害環境対策推進協議会 代表
地域教育推進ネットワーク東京都協議会 プログラムアドバイザー
ストップイットジャパン株式会社 STOPitサポーター
全国教室ディベート連盟 副理事長 大会運営委員長
長岡造形大学 非常勤講師

 

NPO法人企業教育研究会は、学校・企業・大学を結び、誰もが教育に関わり、貢献することができる社会をめざして授業づくり、教材づくりを行っています。

https://ace-npo.org/

 

 

記事担当:青木

 


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