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SNSで評価されるのが怖い!「ありのままの自分を自由に表現できない心理」

皆さんはSNSで何を投稿しているでしょうか?日常報告やニュースについてのコメント、エンタメについて話などなど様々あるかとは思います。しかし、それらの内容は本当に「ありのままの自分」を表したものでしょうか?今回は大阪大学社会心理学研究室の山縣芽生氏に「他人からの評価を気にする心理」について執筆いただきました。

 

言論のユートピア、SNS

近年、Twitter、Instagram、FacebookなどのSNSを通して、自分の意見を不特定多数の人に向けて誰でも気軽に発信することができるようになりました。その一方で、皆さんは本当にありのままの自分を自由に表現できているでしょうか?この点がこの記事のポイントです。
総務省との共同研究による橋元らの調査(「スマートフォン利用と依存傾向」)では、SNSで意見を発信するときに悩んだり負担に感じたりすることをたずねた結果、「どこまで書いて良いのか」と悩む人、一度発信してしまった内容について「あれで良かったのか」と後から悩む人が多いということが示されています (URL先、p.21を参照) 。

総務省との共同研究による橋元らの調査(「スマートフォン利用と依存傾向」)より

 

皆さんも、SNSに何気なく書き込みをしている時に、こう考えたことはありませんか?「これを書き込んだら、どう思われるのだろうか?」と。そう考えて書き込みをやめた、なんて経験はありませんか?自由に表現できるはずなのに、それを自制したあなたの心理には何が働いたのでしょうか?

今回は、このような「ありのままの自分を自由に表現することができない心理」について心理学的観点から説明していきます。

 

自分を自由に表現しないのはなぜ?

自分を自由に表現しないのはなぜ?

 

なぜ自分を自由に表現しないの?

皆さんは、ありのままに自分を表現していますか?われわれは自由に表現できる権利を持っていますが、いざ不特定多数の人を前にするとそう簡単には自分をありのままに表現しないでしょう。ありのままの自分の意見を自制してしまう理由として、「そう言ってしまうのが、ためらわれるから」、「自分のイメージに合わないから」など様々あると思いますが、「他人からどう見られているのか」という不安が最大の理由の一つです。

心理学では「他人からどう見られているのか」という不安のことを評価懸念(evaluation apprehension)と呼んでいます。評価懸念は、他人から悪く思われたくないという欲求の表れです。

他人が自分をどう思っているのかはそう簡単にはわかりません。だからこそ、人間はSNSのような相手の顔がわからない状況にいると不安に陥ってしまうのです。

SNS上でありのままの自分を表現することができなくなるのは、他人から悪く思われるのではないかという評価懸念が特にはたらきやすいからなのです
(参考:Watson, D., & Friend, R. (1969). Measurement of social-evaluative anxiety. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 33, 448-457.

 

悪く評価されることが恐ろしいのです

悪く評価されることが恐ろしいのです

 

日本人は他人から悪く思われると困る?

日本を含む東アジアの国は、知っている人との固定的な関係が長く結ばれる社会とされています。このような社会のことを関係流動性*が低い社会と言います (Yuki et al., 2007)。

関係流動性が低い社会ではメンバーの入れ替わりが少ないので、悪い人でも一度メンバーになるといつまでもそのコミュニティに居続けることになります。そのため、悪い人を見つけたらすぐに排斥することが自分を守るためや集団を存続させていくためには吉となるのです。こうした社会で生きていくには、他人に悪く思われることを回避することがとても重要なので、評価懸念はとても重要な行動原理になります。

 

実際に、日本に代表される東アジア文化では、自分たちに不利益をもたらす可能性がある「悪い評判を持った人」を仲間はずれにする傾向にあります。2010年にWangとLeungがこのことに関する実験を行いました。

この研究では、東アジア人(台湾人、シンガポール人)とアメリカ人を対象にして、「悪い評判の人を罰する傾向」の違いを調べました。以下は実験の具体的な内容ですので、みなさんも想像しながら読んでみてください。
(参考:Wang, C. S. & Leung, A. K. Y. (2010). The cultural dynamics of rewarding honesty and punishing deception. Personality and Social Psychology Bulletin, 36, 1529–1542.)

 

あなたとAさんはある仕事を成功させ、あなたは賃金として100ドルを受け取りました。ただし、賃金がなぜ100ドルになったかは、Aさんの評判の良し悪しで異なっていました。

 

【評判の悪い人バージョン】
Aさんは自分の不正を隠していた不誠実な人だったために、あなたの賃金は150ドルから100ドルに減っていたのです。そんな時、Aさんに罰金を課すチャンスが巡ってきました。あなたが1ドル支払う度にAさんの報酬を10ドル減らすことが出来ます。最大で100ドルまで減らせるなら、あなたはいくらまで減らしたいと思いますか?
【評判の良い人バージョン】
Aさんは仕事を上手くこなせるような誠実な人だったおかげで、あなたの賃金は50ドルから100ドルに増えていたのです。そんな時、Aさんに報酬を課すチャンスが巡ってきました。あなたが1ドル払う度にAさんの報酬を10ドル増やすことが出来ます。最大で100ドルまで増やせるなら、あなたはいくらまで増やしたいと思いますか?

 

罰金を増やすのであれ、報酬を増やすのであれ、そのためにあなたが支払う金額は同じです。つまりここで回答される金額を比べることで、それぞれの文化圏の人々(アメリカ人と東アジア人(台湾人・シンガポール人))が、評判の良い人に報いることと、評判の悪い人を罰することのどちらを重視するかを知ることができるのです。

分析の結果(図1参照;黒色が報酬、灰色が罰を示す)、アメリカ人の場合は報酬と罰に大きな差があり、評判の良い人に報いることがより重視されていました。一方で、東アジア人では両者に差がなく、評判の悪い人を罰することも同じくらい重視されていることが分かりました。

 

図1 国と対象者の違いが報酬と罰に及ぼす影響

図1 国と対象者の違いが報酬と罰に及ぼす影響

 

東アジアのように関係流動性が低い社会では、新しいコミュニティに入り直すことは非常に困難ですので、「評判の悪い人」と見なされたせいで今のコミュニティから排斥されてしまった、なんてことは絶対に避けなければなりません。それゆえ、人々は他人から悪い評価を得ることがないよう、つまり仲間はずれされないために、自分よりも他人が好むような姿で振る舞うのです。

このような「悪い評価を得ない」ことが重要とされる社会で過ごしてきたという要因も、他人の目を気にし、SNSでもありのままの自分を自由に表現することをためらわせるのです。
(*関係流動性…知らない人と簡単に、気軽に仲良くなれる機会が多い環境なのかどうか)
(参考:岩谷舟真・村本由紀子・笠原伊織 (2016). 評判予測と規範遵守行動の関係: 関係流動性に着目して 社会心理学研究, 32, 104-114.

 

SNSで上手に生きるためには

ここまでの議論をまとめると、SNS上で自分を自由に表現できない根本的な原因の一つは、意見を発信するにしても悪い評価を得ないようにしようと考えがちになる点にあります。こうした評価懸念から解放され自分を自由に表現したいと思うなら、対処法としてあなたを特定しないアカウントを作ってみるのも一つの手です。あなたを特定しないアカウントで書き込めばあなた本人が評価されることはなくなります。

 

しかし、SNS上で自分を表現するためには、周りの評判とどう付き合っていくかという問題そのものを考え直してみてもよいかもしれません。評価懸念を抱えてばかりだと、悪い評価を避けて無難にやり過ごすという意味では「上手に」生きられるかもしれませんがストレスもたまります。

 

視点を転換して、ありのままの自分を表現することで、あなたの個性的な側面を良い評価につなげるための場所としてSNSを活用しようと考えるのはいかがでしょうか。SNSほど気軽に自分を表現できるツールはそうありません。学校など普段の生活のつながり以外の関係を築くことができるので、関係流動性も高いです。

 

ありのままの自分を発信することであなたを良いと評価してくれる人たちとつながり、積極的にあなたの良い部分を認めてもらうことが、幸も不幸ももたらすSNSで上手に生きていくコツになるのではないでしょうか?

 

自分を自由に表現してみては?

自分を自由に表現してみては?

 

 

執筆者プロフィール
山縣 芽生 (やまがた めい)
大阪大学大学院人間科学研究科 博士前期課程在学中
専門は社会心理学 特に、道徳のメカニズムについて研究を行っている。


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