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警察勤務時に見た、子ども達が巻き込まれるネットトラブル<前編>

 

少年問題アナリストの上條理恵氏に最近の事例についてお聞きしました

 

ここ数年で青少年がネット・SNSを利用する中で事件やトラブルに巻き込まれるニュースを見かけるようになりました。今回はそうした少年の事件やトラブルを、教員、そして警察の上席少年補導専門員という立場で数多く対応してこられた経験を持つ、少年問題アナリストの上條理恵氏に最近の事例についてお聞きしました。

 

もはや陰口ではない・・・

警察に勤務していたころ、SNSで仲間外れをされた高校生と面接をしたことがありました。部活仲間から、グループ外しに遭い、みんなから悪口を書かれていたのでした。その高校生は、その事実を後から知りショックを受けしばらく学校を休むことになりました。というのも、部活をしているときには、どの仲間ともうまくいっていると思っていたからです。

 

ただ、些細なことがきっかけで、みんなから言葉の攻撃を受ける羽目になってしまい、一時的に人間不信に陥ってしまったのでした。悪口を書いていた子ども達からも話を聞きましたが、誰もそこまで悩んでいるとは思っておらず、誰もが軽い気持ちでやっていたと答えていたのです。中には、そんなことでいちいち警察に相談する方がおかしいとか、どこにでもよくある話だと、うそぶく声さえ聞こえました。

 

保護者も、そんなことはよくある話だと思いがちになってしまいますが、じゃあ、わが子がやられる立場にいたらどうでしょう。とても悲しい気分になってしまうことでしょう。

 

かつては、ひそひそ話や影口と言われたものが、SNSの世界では、表に出てきて正々堂々とやり取りされているのです。しかも、かつては音声として存在していた会話が、無声の文字での会話になりました。(現実の世界からみれば、これも影口の一つかもしれませんが・・・)。ですので、SNSの登場により、何十人いても、無音の状態のまま会話が可能になったわけです。これは、想像すると、怖い状況ですよね。

 

いじめをする理由、それは「いじめられたくないから」だと私は考えます。子ども達も自分がターゲットになるのを恐れ、「寄らば大樹の陰」と言わんばかりに加害者側に付いていきます。それが子どもにとって自分の身を守るための一番安全なポジションだからです。

 

娘の裸の写真が・・・

ある日、中学生の娘さんを持つ母親が血相を変えて警察に来署されました。お友達のお母さんから、「お嬢さんが大変なことになっている。」と言われたので、確認してみると、娘の裸の写真が学校内で出回っていたということでした。事実を知った瞬間は、かなりショックを受けたご様子で、お話しながら涙を流していました。「まさかうちの子が」という言葉がありますが、私も本人にお会いした時、「え?この子が?」という気持ちでした。

 

SNSで自画撮りの被害者になる女の子たちは、まったくごく普通のお嬢さんたちばかりです。学校にも普通に登校し、部活動も普通にこなし、深夜に外出したり違法行為をしたりすることなどもありません。保護者もそんなことになろうとは夢にも思っていないのではないでしょうか。

 

つまり、家の中で、保護者と同じ屋根の下にいるときに犯罪の被害に遭ってしまうということになります。子ども達は、SNSで知り合ったり、友達とやりとりしたりするうちに、大抵の場合は男性から女の子に対して、最初は顔写真の要求が始まり、それが段々エスカレートしていって最後は裸の写真を要求される事態になり、女の子も大事になるとは考えもせず相手に自分の写真を送ってしまうということになるのです。

 

女の子たちは、相手の「誰にも見せないから」という言葉を信じて裸の写真を送ってしまうのですが、自分が児童ポルノ事件の被害者になるとは考えていないのでしょう。でも、その結果、相手にネット上にアップされてしまい、窮地に追い込まれることになってしまうのです。その画像は、瞬く間にコピーが作成され、あっという間に拡散されてしまうので、完全にゼロにするのは不可能ですし、半永久的に画像が残ってしまいます。そして忘れたい記憶も忘れられない記憶になってしまうのです。

 

この少女は下着姿の写真を要求されたとき、さすがに断りましたが、「学校にばらすぞ」と脅されたことから、いやいやではありましたが、裸の写真を送ってしまいました。少女はそのことを誰にも言えず親にバレないように平静を装って登校していましたが、少女が知らないうちに友人に裸の写真が拡散されてしまっていたのでした。

 

このように、少女が被害者になることが多いわけですが、そんな状態になっても誰にも言えず我慢しながら耐えることになってしまうのです。そんなことになったら大変です。そこで、注意しなければならないことは、以下の3つです。

 

(1)知らない人をにわかに信じない。

(2)ネット上で知り合った人の要求を簡単に受けいれない。

(3)困ったことがあれば、誰かに相談する。

 

一生後悔するようなことがないように、十分気を付けて利用してほしいものです。

 

面倒くさいな・・・

皆さんもLINEのグループを利用している方が多いと思いますが、子ども達の加入の数をみてみますと、だいたい6~10グループが多いように感じます。中には20以上のグループに加入している子ども達もいましたが、よく考えてみますと、子ども達は断り切れずに加入せざるを得ない状態もあるのでは?と思います。

 

断ったりすれば仲間外れになってしまい、いじめの対象になってしまう恐れがあるからです。ただ、一度グループに入ると、「○○がグループから退出しました」というメッセージが表示されてしまうので、抜けたくても抜けられず「ちょっと面倒くさいかも」と感じている子ども達の声もすくなくないようです。グループラインで仲間外れにされたり、嫌がらせを受けたりする子どももいて、とっても便利な機能ですが、あればあったで子ども達も苦労しているのかも?と思ってしまいます。

 

私たち大人でも注意しなければならない職業が有ります。それは、子どもを指導する立場の方達です。先生と生徒、先生と保護者の関係において個人的にメールアドレスやSNSのIDを交換することは危険です。当事者同士はただの連絡手段のみであっても(当然ですが)個人間のやり取りはしない方が良いでしょう。李下に冠を正さずということわざがありますが、ほかの先生や保護者などから疑われないよう自分の行動に特に注意しなければなりません。噂話がSNSで拡散されでもしたら、大変なことになってしまうからです。

 

後編に続きます。

 

執筆者プロフィール

 

上條理恵

少年問題アナリスト
元上席少年補導専門員
東京経営短期大学 特任准教授

 

 

 

 

小学校、中学校、高校の講師を経て、1993年より、千葉県警察に婦人補導員として、青少年の非行問題(薬物問題・スマホ問題・女子の性非行)・学校との関係機関の連携・児童虐待・子育て問題に携わる。
小・中・高・大学・保護者・教員に向けた講演は1500回以上。
「金持ちより人持ち」をモットーに人間関係の大切さを伝える。
学会活動として、非行臨床学会の会員としての活動も行う。

 

 

記事担当:青木

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