サイバー犯罪の検挙状況 警察庁
2014/03/27に公開された警察庁調査データ解説の続きです。前回は、ネット上の自殺予告について解説しました。
今回は、サイバー犯罪の検挙件数(PDF)です。
平成25年中のサイバー犯罪の検挙件数は、8,113件と、前年比で+779件(+10.6%)で増加し、過去最高を記録しました。
この中で、サイバー犯罪は大きく3つに分類されています。
- 不正アクセス禁止法違反
- コンピュータ・電磁的記録対象犯罪、不正指令電磁的記録に関する罪
- ネットワーク利用犯罪
1.不正アクセス禁止法違反
これは分かりやすいと思います。他人のパスワードなどを不正な方法で取得し、利用したりすることです。不正に取得することも、不正に要求することも罪ですし、不正に取得したものを所持(保管)しておくことも罪です。
2.コンピュータ・電磁的記録対象犯罪、不正指令電磁的記録に関する罪
これはなんだか難しそうですね。でも意外とそのままです。
『コンピュータ・電磁的記録対象犯罪』は、コンピュータの処理を間違えさせたり、コンピュータやシステム上に記録されたデータを不正に改ざんすることです。例えば、コンピュータの処理を間違えさせるというのは、クレジットカードを偽造し、他人のクレジットカードとして認識させて買物をしたりすることです。記録されたデータを不正に改ざんするというのは、銀行のシステムが記録している預金残高を書きかえる、というようなことです。
『不正指令電磁的記録に関する罪』は、いわゆるコンピュータ・ウィルスのことです。ウィルスを作成、提供、忍び込ませるような行為だけでなく、そのウィルスを正当な理由なく、実行される状態で保管することも罪になります。
3.ネットワーク利用犯罪
ネットワークを利用した犯罪、又は犯罪の実行に必要不可欠な手段としてネットワークを利用した犯罪を指します。
この統計データに関して、児童買春及び青少年保護育成条例違反は、ネットワーク上で連絡を取り合った者同士がネットワーク上において性交等に合意している場合に限って計上しています。
こどもが被害を受ける犯罪
これらのサイバー犯罪は、ほぼすべて、こどもが被害を受ける可能性があります。
そのうち特に、その可能性が高い犯罪の検挙件数を、以下に示します。
H21 | H22 | H23 | H24 | H25 | 前年比増減 | ||
児童買春・児童ポルノ法違反(児童ポルノ) | 507 人 | 783 人 | 883 人 | 1,085 人 | 1124 人 | +39 人 | +3.6 % |
わいせつ物頒布等 | 140 人 | 218 人 | 699 人 | 929 人 | 781 人 | -148 人 | -15.9 % |
著作権法違反 | 188 人 | 368 人 | 409 人 | 472 人 | 731 人 | +259 人 | +54.9 % |
青少年保護育成条例違反 | 326 人 | 481 人 | 434 人 | 520 人 | 690 人 | +170 人 | +32.7 % |
児童買春・児童ポルノ法違反(児童買春) | 416 人 | 410 人 | 444 人 | 435 人 | 492 人 | +57 人 | +13.1 % |
出会い系サイト規制法違反 | 349 人 | 412 人 | 464 人 | 363 人 | 339 人 | -24 人 | -6.6 % |
わいせつ物頒布罪、出会い系サイト規制法違反以外は、増加傾向にあります。
ネットワーク上のわいせつ物頒布罪は、わいせつなデータをばら撒いたり、陳列することを指します。有償販売目的で保管することも含まれます。H23年7月の刑法改正で対象が広がり、そこで検挙件数が増加したと思われます。件数の減少は、その認知度が向上したということでしょうか。法改正が認識されたというか、罪になる範囲が認識されたという意味です。
出会い系サイト規制法違反の減少については、一概に犯罪件数の減少とは見れない部分があります。この現状については、『出会い系サイト被害減少?被害現場はコミュニティサイト、そしてアプリへ・・・』や、『出会い系サイト・コミュニティサイトに起因する事犯の現状と対策 2013年 警察庁』などで解説しています。
気づかぬうちにこどもが被疑者に・・・
被害だけでなく、こども自身も気づかぬうちに、犯罪を犯してしまう可能性があります。
例えば、こどもが「友達のゲームアカウントのパスワードを聞き出してアクセスした」ということがあります。これは不正アクセスにあたる可能性があります。「他人の描いた画像を、自分が描いたかのようにSNSで紹介した」などは、著作権法違反にあたる可能性があります。
こういったケースで驚くのは、こどもたちが、それは犯罪だと気付いていない場合があることです。特に前の例の「友達のパスワード」のような話は、友達と自分だけの間の世界の話だと思ってしまうのでしょうか、気づいていないことが多いようです。
このあたりについては、それ犯罪です!意外と知らない、ネット上に見られる犯罪行為、で他にも例を挙げて解説しています。
この機会に、犯罪被害だけでなく、意図せず犯罪に足を踏み込んでいないかという点も、意識してみてください。