「インターネット利用アドバイザー」ってどんなことをするの? 一般財団法人インターネット協会の取り組み シリーズ(4)
インターネット利用アドバイザー(以下、アドバイザー)について紹介するシリーズの第4回をお送りします。今回は、アドバイザーの一人である、竹内義博氏にアドバイザーになった経緯や、現在の活動についてお聞きしました。
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特集の第4回を担当させていただく、インターネットアドバイザー第3期生の竹内義博です。私からは、2007年にインターネット利用アドバイザーを受験した動機と、その後の活動について、体験をもとにお伝えしたいと思います。
インターネットで世界とつながる
1995年に世界中でWindows95のブームが起こってまもなく、私も自宅のパソコンをインターネットに接続しました。
それまで行っていたパソコン通信はホスト(プロバイダー)と通信してそこから情報を取り出すことがほとんどで、自ら発信出来る機会はそのプロバイダー内の掲示板やフォーラムだけでした。
しかし、自宅の自分のパソコンから世界とつながり、何でも情報発信ができるインターネットへの無限の可能性を感じました。その一方でインターネットが社会にもたらす影響への不安も感じながら使い始めました。
インターネット協会との出会い
インターネットを使い始めて10年ほどが経過した2005年ごろのある日、普段から一緒にパソコンやインターネットを使っていた娘(当時10歳)から、既存アニメキャラクターの絵を自分でまねて描き、ウェブページ(お絵かき掲示板)に掲載する事についてその是非を問われ、その時に私は答えに詰まってしまいました。
「子どもが描く絵ぐらい良いのでは?」と一瞬思ったからです。
そこで、その答えを模索している際にたどり着いたのが、インターネット協会です。
「インターネットにおけるルール&マナー検定」を自宅で受験
インターネット協会のウェブサイトを見てみると、「インターネットにおけるルール&マナー検定」というものがありました。
当時は検定試験と言えば、受験日が決まっていて、どこかの会場に赴いて受験するのが一般的でしたが、さすがインターネット協会の検定試験、申し込みをすれば、即、自宅に居ながらにして自分のパソコンから受ける事が出来るといいますので、公式テキストをネットで買って勉強して挑みました。
問題は全部で100問、制限時間は6時間
最初は時間もたっぷり6時間もあるので、のんびりコーヒーでも飲みながら、と思っておりましたが、始めるとなかなか大変で、わからない問題に出くわしても公式テキスト以外に調べるすべはありませんでした。
結局4時間ほどかけて終了し、評価はスコア方式なので「不合格」というのはありません。しかし私のスコアは100点満点中の75点で、目安として「インターネットをビジネスや教育現場で利用している人」ということでした。
スコア75に納得できない
すでに10年以上インターネットを使っていた自分自身にとって、このスコア75はショックで、決して納得のできるものではありませんでした。
しかし検定終了後には詳細な解説が用意されていたので、それを読んで勉強し、何度か受験してようやく納得できるスコアを出す事が出来ました。
「インターネット利用アドバイザー」受験を決意
2000年代はインターネットの利用者が急速に増え始めた時期でした。しかも、インターネットを使うには大人も、子どもも、初心者も差がありません。しかし自動車運転免許制度の様なものもありません。
個人がそれぞれ好き勝手に使っていくと大変な事になるのでは?と、「インターネットにおけるルール&マナー検定」を受験して実感しました。
それで今度は自分がインターネットの利便性と危険性、利用における正しいマナーやルールについて伝えていきたいと「インターネット利用アドバイザー」の受験を決意しました。
(「インターネット利用アドバイザー」の詳細に関しては、このシリーズの第1回目に一般財団法人インターネット協会 主幹研究員の大久保さんが ”「インターネット利用アドバイザー」ってどんなことをするの?”で紹介されています。)
第1関門:検定試験
これはすでにインターネットにおけるルール&マナー検定スコア90以上でクリアしています。
第2関門:論文試験
これについては、パソコン通信時代からのネット経験、1995年からこの約10年間に幼い我が子と共に試行錯誤し使った経験、ニュースなどで知り得た事例、インターネットにおけるルール&マナー検定で学んだ事をもとに無我夢中で書きました。
おそらく、それまでの人生の中で大学時代の卒論以上に真剣に取り組んだのではないかと思います。
論文テーマは以下のようなタイトルで書きました。
「インターネットにおける匿名性に関する現状と課題について」
「インターネット利用アドバイザーを受験した動機と、合格したらその称号をどのように活用したいか」
第3関門:面接試験
これは東京のインターネット協会の事務所で行われるため、関西在住の私は朝から新幹線に乗り東京へ行って挑みました。
具体的には何を聞かれたかはあまり覚えていませんが、1人ずつ面接室に呼ばれて論文の内容についてと、経歴、アドバイザーになったら何がしたいか、何が出来るかなどについて質問された気がします。
インターネット利用アドバイザーに合格
約1ヶ月後に面接試験の合格通知を頂き、再び合格者研修のためにインターネット協会の事務所を訪れ、称号が付与されました。
「ルール&マナー検定こども版」を娘が受験
生まれた間もない頃から私と一緒にインターネットを使っていた娘(当時10歳)も「ルール&マナー検定こども版」を受験し、こちらは見事に一発で満点合格でした。
インターネット利用アドバイザーとしての活動
講演活動
最初のうちは先輩アドバイザーに同行という形で何度か見学させていただくだけで、数年間は自ら講演させて頂く機会に恵まれませんでした。
しかし、高等学校への携帯電話の普及に伴い2011年の夏、地元の高等学校でデビューすることが出来ました。
それからは他の団体や自治体・学校PTAなどから直接依頼があり、昨年度は児童・生徒にとどまらず教職員の研修会・自治体などが主催する人権研修会などで年間60回ほど講演をさせて頂きました。また、活動範囲も近畿のみならず、九州・中国・関東地方へと広がりました。
検定試験問題を作成
今では10年前には自分が勉強し受験した「インターネットにおけるルール&マナー検定」の試験問題とその解説の作成もさせて頂いております。
この問題は4択で正解は一つでいいのですが、一見正解に思わせる3つの間違いを考えるのに結構苦労します。
マニュアルを作成
初心者向けのSNSマニュアル「知っておきたいその時の場面集Facebook編」の改訂を担当させて頂きました。
アドバイザー研修会
アドバイザー称号の有効期間は3年間なので、更新のために3年ごとに研修を受講する必要があります。研修会は東京で行われるため3年に一度は東京に赴くことになるのですが、私はアドバイザーの皆さんの活動報告や意見交換を楽しみにしているので、更新に関係無く毎年参加しています。
「インターネット利用アドバイザー」の称号を頂いてから10年、公式テキストの初版が出版されてから13年が経過しています。
ネットの世界は日進月歩なのでテキストや私が当時書いた論文の内容とはさぞかし変わっていると思いました。しかし、改めてテキストを開き、自らの論文を読み直していてみたところ、予想に反してこのテキストに書かれている内容は法規関連の項目を除けば今でも十分通用するものでした。
もうひとつ論文試験の中で次のような事を書いておりました。
”インターネット上では真の匿名性は存在しない事を認識し、現実社会とリンクして、情報の発信者・発言者は自分の発言に責任を持ち、人の気持ちを考え、インターネットの情報は不特定多数に流れる事を再認識し、良識をもった利用を促す。” (抜粋)
現代は老若男女を問わず多くの人が普通にネットを使うことが「当たり前」となった時代です。啓発には日々の流動的な部分には敏感に取り入れつつ、この100年先でも通用する不変の部分とバランスをはかりながら、インターネットをより安全、便利に使うことができるように、インターネット利用アドバイザーの活動を続けて行きたいと思います。
プロフィール
竹内義博(たけうちよしひろ)
一般財団法人インターネット協会 インターネット利用アドバイザー
Webエンジニア等を経て、2007年に一般財団法人インターネット協会 インターネット利用アドバイザー、2010年からパソコン教室「ぱそこんる~む123」代表。娘(現大学生)のネット問題の経験から関心を持ち、一般社団法人 ソーシャルメディア研究会にて情報モラル教育について研究している。
近年は、eネットキャラバン認定講師(総務省等)、京都府警察ネット安心アドバイザー等としても、スマートフォンやネットでのトラブル、ネット依存等について、教員、保護者や児童生徒を対象に啓発講演活動を行っている。
2016年と2017年に京都府警察サイバー犯罪対策課から青少年のネット問題への取組が評価され、表彰される。
シリーズ担当:青木