市野敬介の市野敬介的こころ(4) ~この世界の片隅から「言葉遣い」を考える~
今回お届けする記事はNPO法人企業教育研究会の市野敬介氏によるシリーズ第4弾です。IBMが提供するIBM Watson Personality Insightsと呼ばれる、テキストデータを元に執筆者のパーソナリティを診断するシステムを実施してみたそうです。
この診断結果が情報モラル教育やSNSのコミュニケーションと、どのように関係してくるのでしょうか?ぜひ、最後までお読みください!
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この夏、広島市に出張でうかがいました。県内各所の中学校・高等学校の先生方と保護者が集まる研修会で、情報モラルに関する講師として登壇する機会をいただいたのです。
出番の前に、主催者を代表して、ある学校の校長先生が講話をされました。その中で強調されていたのが「今日をきっかけに、ご家庭での日常会話の言葉遣いを見直してください」とのこと。自分の中学生ごろのことを思い返してみると、家族に対する日常の言葉はぞんざいになっていたこともあり、胸が痛みます。(長期間にわたる独居の現在は会話すらないため胸が痛むことはさておき…)
「保護者のみなさまも、言葉遣いがぞんざいになっていませんか?」というのが、その校長先生の問いかけでもありました。それが、対面での会話だけでなく、SNSでの会話にも表出するのではないか、という話です。
この後に出番を控える私は「極端な話ではあるものの、まぁわからなくもないなぁ…」、と、舞台袖でぼんやりと考えながら、自分の言葉遣いについて気になってきました。
そうだ IBM Watson 先生に診断してもらおう
別な日の宴席で教えてもらったのが、IBM Watson Personality InsightsというWebサイトです。
IBM Watson Personality Insights
https://personality-insights-demo.ng.bluemix.net/
「テキストから筆者の性格を推定してみましょう。Personality Insightsは、言語学的分析とパーソナリティ理論を応用し、テキストデータから、その筆者の特徴を推測します。」とあります。
――こういうのもあるのか。せっかく「つながる世界の歩き方」で随筆を連載させていただく砌(みぎり)にて、過去の3本の文章をサンプルデータとして、私の言葉遣いから、性格を推定してもらうことにしました。
確度が非常に高い解析結果…
分析された単語の数は、6,787個。6,000個を超えていたため「確度が非常に高い解析結果(質の高い、統計的に有意な解析結果)」ということでした。(そもそも6,000を超える意味のある文章の単語を書くことに一つのハードルがありそうですが。)結果は…
【筆者・市野敬介の性格特性】
・表現に富むタイプであり、自信のあるタイプであり、また合理的なタイプです。
・確信を持って行動するタイプです:困難を感じたりせず、大抵の場合自信に満ちています。
・権威に挑むタイプです:権威や伝統を守るよりも、より良い方向へ変化させる方が良いと考えます。
・また、感情移入するタイプです:他人がどう感じるかを意識し、同情するタイプです。
・発見につながる体験を好みます。
・伝統と生活を楽しむことの両方にあまりこだわりません。人が通った道よりもわが道を行くことを大切にします。また単なる個人の楽しみよりも大きな目標を伴う行動を優先します。
なんということでしょう。Watson先生の匠の技によって、かなり見抜かれている気がする…。
【筆者・市野敬介は、下記のような傾向がありそうです】
・自動車を買うときは維持費用を重視する
・歴史映画を好む
・社会貢献のためにボランティア活動をする
自動車は維持費用がかかるため、自家用車は持ってない…。映画館に足を運ぶ時は、歴史映画(古代史から現代史まで)が多い…。(大学生のころ、唯一映画館で見たのは『どら平太』だった気がする)ディベート甲子園の大会運営はボランティアでやっているよ…。しかも20年近く…。
【筆者・市野敬介は、下記の傾向は低そうです】
・商品を購入するときは商品の実用性を重視する
・自動車を買うときは安全性を優先する
・娯楽雑誌を読む
物を買う時には実用性よりもデザインとかで買ってしまうことがある。(日用品は、他人の結婚式の引き出物としてのカタログギフトで揃ったりする…)そして娯楽雑誌は、あまり読まない。特に漫画雑誌や週刊誌などはあまり読まない…。(そういえば、『週刊ベースボール』も、ここ2年は買ってないなぁ…)
さらに細かい項目を見ていくと…
そして、さらに細分化された性格のスコアが弾き出されました。「スコアはすべて百分位数であり、膨大な集団の中での位置を表しています。たとえば、外向性が90%という結果は、その人が90%外向的であることではなく、100人中その人より外向性の低い人が90人(高い人が10人)ということを意味しています。」
なるほど。「世界がもし100人の村だったら」私は何番目ぐらいの傾向にあるか、という相対的なスコアということですな。
個性のスコアを見ると、なんと乱太郎もジャニーさんも、そして本人も驚きの『知的好奇心100%』でございました。このスコアが高い人は…「知的好奇心があり、美に敏感で、新しいことを試そうとするタイプです」とのこと。(自身の美に鈍感なのは置いておこう)「外向性」も98%、「誠実性」も80%と高いようですな。
逆に低いのは「協調性」が34%。他人の興味よりも自分の興味を優先する。他人の言葉の裏を考えてしまう傾向があるということか…。そして、「感情起伏」が12%。「穏やかで、あまり怒らないタイプです。」そうですね。「但し、それは自信に満ちていたり、幸せな人だというわけではありません」ああそうかい。ほっといておくれ…。
「欲求」のスコアは、「好奇心・自由主義・理想」が高め、「安定性・興奮」が低めの傾向にあるようです。Watsonさん、ようわかっとるやないか…。そして価値のスコアはもっと極端です。「自己増進・快楽主義・現状維持」が恐ろしく低いスコアになっていることがわかります。
この世界の片隅を拾い集めると
IBM Watson Personality Insights は、Twitterのつぶやきを活用した性格分析もできます。無料で体験できますので、ご興味のある方は、お試しください。
自分の世界の片隅を拾い集めて、データ分析をした結果、自分の認識している傾向とだいたい一致していたように思います。(みなさまから見た私の性格は別かもしれませんが)
IBM Watson Personality Insights には、このようにも記されています。「日々の経験や考えている事等に言及していれば、推定精度がより高くなります。」この随筆は、自分の考えや価値観がそのまま反映されています。それにともない、言葉遣いも、思いに任せています。まさに、この世界の片隅で日々を過ごす中での経験や、考えていることのあらわれなので、合点がいきます。
古くは「ミクシィ疲れ」なんて言われていたように、SNSの中で他人に気を使って振る舞っていると、本来の性格とSNS上の自分の言葉や行動の不一致がおこり、ストレスを感じることがあるのも頷けます。
本格的な精神分析とはまた違いますが、時々、こういう分析を試してみながら、自分の思っている自分と、SNSでコミュニケーションをとる自分とを比較してみることが、表現の場をうまく使いこなすコツなのかもしれませんね。
一方で「快楽主義」や「協調性」のスコアが低く、相手の言葉の裏を考えてしまう傾向にある自分は、本来は、こういった自分の行動などをデータとして活用されることに対し、とても慎重だということも見えてきます。どんなにポイント還元がえげつないキャンペーンを打たれても、nanacoポイントを半分にされても、QRコード決済の乱立にまったく食指が動かないのは、やはり性格によるところが大きいことがわかります。
そうはいっても、便利さや、お得感の裏側にあるものを常に考え過ぎてしまうと、これからの世の中は生きづらいのかもしれません。この世界の片隅に取り残される不安が漠然と湧きあがってきます。「このやるせない モヤモヤを だれかに 告げようか」を実行する場として随筆を書く場をいただけるのはありがたいことだと実感して、本稿を締めさせていただきます。
執筆者プロフィール
市野敬介(いちのけいすけ)
NPO法人企業教育研究会 事務局員
千葉県青少年を取り巻く有害環境対策推進協議会 代表
地域教育推進ネットワーク東京都協議会 プログラムアドバイザー
ストップイットジャパン株式会社 STOPitサポーター
全国教室ディベート連盟 副理事長 大会運営委員長
長岡造形大学 非常勤講師
NPO法人企業教育研究会は、学校・企業・大学を結び、誰もが教育に関わり、貢献することができる社会をめざして授業づくり、教材づくりを行っています。
記事担当:青木