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いじめ防止のためのアプローチ【取組み紹介シリーズ[3]】

2015年3月25日法政大学教職課程センターシンポジウム「いじめ問題を考える2」より、法政大学教職課程センター長教授の尾木直樹先生のお話とその中で触れられた様々な取組みについてご紹介します。

 

 法政大学教職課程センター長・教授 尾木 直樹(おぎ なおき)

教育評論家、臨床教育研究所「虹」所長。早稲田大学卒業後中学高校の教師として22年間、教育 実践の現場に携わる。現在はいじめ問題を含め教育に関わる調査と研究、講演活動や執筆活動など幅広く行う。

 

1.大津いじめ自殺事件に関連して

尾木先生はまず2011年大津市で起きた中学生自死事件(大津いじめ自殺事件)について触れられました。これは中学校の男子生徒がいじめを苦に自宅で自殺した事件ですが、当時学校と教育委員会の隠蔽体質が問題視され大きく報道されたものです。2015年3月17日に遺族と市側では和解が成立しました。この和解内容は「一定の評価が(世間から)なされている」とのことです。理由としてまず「学校が自殺を予見できる状況にあったという点が盛り込まれたこと」です。尾木先生は「これにより『学校のいじめ事案への責任』が明確化された」とおっしゃっています。

補足

同シンポジウム後の2015年10月、大津市教育委員会はアンケートなどの「情報開示基準案」を公に示しました。この基準案が示されたことで、例えば子どもの心身に重大な被害をもたらしたいじめに関し(本事件もこれに該当)、加害者名を被害者側へ伝えることが義務付けられます。大津市の事件当初、学校は生徒にアンケートを実施しましたが、その結果が被害者遺族へ伝えられた際に殆どの部分が黒塗りでした。遺族が市を相手取った訴訟の中で、大津地裁がこれを「個人情報保護条例の解釈を誤っており違法性があった」と認定したことが、本開示基準案の策定に繋がりました。

関連記事:2015年10月16日朝日新聞デジタルhttp://www.asahi.com/articles/ASHBH5Q14HBHPTJB00Q.html

大津市では、先の事件から、全国でも特に先んじてこのような取組みをかたちにしています。

 

2.行政の隠蔽体質の問題

次に文部科学省が発表した平成25年度児童生徒の問題行動調査の取組みについてのお話がありました。これは「いじめの認知件数」について文部科学省が調査し結果を公表したものです。京都府では1,000人あたりの「いじめ認知件数」は99.8件、一方福島県は1.2件と100件近い差があります。この数字の差について尾木先生は言及され「まだまだ学校や教育委員会の隠蔽体質があるのではないか」とのご指摘でした。

関連資料:平成25年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」等結果について(文部科学省HPより) (「いじめの認知件数」は同資料44頁に記載されています)

http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/10/1351936.htm

 

3.学校側が必要とされる姿勢

続けて「いじめ問題解決の難しさ」についてお話がありました。難しいと思う理由のひとつに「加害者への指導が届かないこと」があるそうです。尾木先生は今までに、加害者家族に直接会う機会が何度かありました。実際に接すると加害者側の「人権感覚」「モラルのズレ」「歪みの大きさ」「基準なき自己中心性」は否めず、それがいじめを引き起こす部分があると感じられるそうです。やはり事件は発生してからでは遅いため、事前の防止教育こそが必要且つ重要と考えた場合、学校は基本に戻り「教育基本法」の前文をあらためて理解することが重要と指摘されていました。そこには「教育は人格の完成をめざす」とうたわれています。尾木先生は「学校は加害者に『いじめない感性』をもたせることが大事とお話しされました。「いじめない感性」とは相手のありのままを認めて受け入れることです。

 

4.学校における「いじめ防止実践プログラム」

「いじめ防止実践プログラム」の紹介がありました。これはいじめ防止のためのアプローチを体系的に言葉で示したものです。ベースには「人権尊重のシチズンシップ教育」があります。「シチズンシップ教育」とは「社会参画へ導くための教育」です。この考え方を学校でも取り入れることは、いじめ防止につながるというお話でした。以下に明示されている内容を具体的に紹介します。

(1)学校での対応

いじめないモラルを確立するために学校が子どもと接する際には「丸ごと愛し」「失敗を受け止め」「寄り添う」姿勢で対応すること。更に「学校では子どもが主役」という考えで、全分野に大胆に子どもを参加させます。一方でいじめの法的な違法性も教えます。学校側の具体的アプローチとしては「保健室を充実させること」や「生徒会によるいじめ対策委員会を常設すること」などが挙げられています。

(2)学級での対応

学級単位ではいじめ防止への「担任の決意表明」を行うことはよいことです。年度の最初に学校側からその意識の高さを生徒に示します。「朝の会」「帰りの会」の中では「いじめチェック」を行うことも有効です。授業でいじめについての学習の時間をとり、討論する「定期点検システムの仕組み化」も必要です。

(3)個人への対応

先生は生徒個々とのコミュニケーションを意識してとることが不可欠です。コミュニケーションがあれば「新しい友達作りへの支援」や「友達とのトラブル解決法」を伝授することもスムーズになります。特にストレスを抱える子やアトピーなどでいじめられやすいと思われる子に対しては自己肯定感を常に伝えていくことも具体策のひとつです。

※ 別のプログラムですが、当サイトでも、以前こちらの記事で「いじめ防止実践プログラム」のご紹介をさせていただいております。

 

5.尾木先生の取組み ~学習アンケートについて~

「いじめかどうか」について子ども達が認識できる感度があるかどうかが課題だそうです。現状把握するための「アンケートづくり」に尾木先生は取組まれ、その紹介がありました。「これは犯人探しではなく『学習アンケート』で、これを実施することにより『いじめが発生しているかどうか』『いじめの自己体験の有無』『いじめに対する認知状況』等を知ることができる」とのことです。シンポジウム内で共有された内容の一部を以下に紹介します。

■■■ アンケート項目の例 ■■

回答は三択 a.いじめだと思うb.ふざけでいじめではないc. どちらとも言えない】

質問1昼休みに遊ぶ時、グループの一人にだけ声をかけない、誘わない。

質問2給食の盛りつけの時、嫌な人が来たのでその人だけ盛りつけをしなかった。

質問3ある人のクツを片方だけ掃除用具のロッカーに隠した。

質問4お金や物を借りたのにわざと返さない。

質問5いつも特定の人に自分の給食の片付けをやらせている。

質問6すれ違いざまに足をかけて倒したり、頭をたたく。

質問7クラスのある人に先生が当てると、すぐにみんなでニヤニヤ笑う。

質問8おしゃべりの最中に、ついお互いが興奮して殴り合いのケンカになってしまった。

関連記事:エキサイトニュース2015年4月23日

http://www.excite.co.jp/News/release/Prtimes_2015-04-23-624-207.html

 

6.今回のシンポジウムを通して

今回のシンポジウムを通し、学校の教育の現場では「いじめる側のモラルを引き上げる」ことが大事だと思いました。
「みんなを認めること」がモラルのスタンダードになることが望まれます。
一方で、スタンダードが崩れていじめが起きた際に備え、早期に発見するための仕組み作りも重要だと思います。

 

 

 

 


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