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ネット依存の引きこもり不登校児が社会のレールに戻った方法

今回は、ネットに依存した生活の経験を持つ大学生に寄稿をしていただきました。


あくまで個人の事例ではありますが、寄稿者がネット依存となってしまった経緯やその状況から抜け出すためにしてきた行動が、「いま」ネット依存で悩んでいる人の参考になればと思います。


 

ゲーム依存から立ち直り20歳を迎えた私から、激動の情報化社会を生きる子どもとその保護者の方へ。実体験を交えて「ネットに依存しないために、依存先を増やしましょう心のよりどころを複数持ちましょう)」という話をしたいと思います。

 

筆者はネットに依存した生活から立ち直りました

 

依存症は、ネットに限らず親子共々苦しいものです。私も母も、随分悩みました。あのとき、正しい考え方を誰かが教えてくれればもう少し違っただろうな。とたまに考えます。この記事が、悩んでいる誰かの心を少しでも軽くできれば幸いです。どんな子どもでも、親を苦しませたいなんて最初から思う子はいません。

 

 

デジタルネイティブ世代の落とし穴

小学生の頃、私はネット依存症に陥っていました。まさに、ネットに使われる側のような生活でした。寝ているとき以外は画面にかじりつき、回線を抜かれると激怒して、依存する前後の自分からは考えられないくらいの豹変ぶりをみせました。

振り返ってみると、異常だったと感じます。それに対応した私の親は、どんなに辛くて怖かっただろうと胸が痛みます。今はそれを脱し、ネットを上手く使う側になったと自覚しています。

 

そんな私は、デジタルネイティブと呼ばれる、生まれたときからネットやパソコンが身近に存在していた世代です。小さい頃はまだガラケーが主流で、自分用の携帯を持っている子はほとんどいませんでした。

しかし、家のパソコンを使って友達同士でメールを送り合ったり、3DSで通信対戦やメッセージ交換したり……というのは、ごく当たり前のことでした。

 

筆者の体験が参考になれば幸いです

 

今日では、生まれたときから、身近にスマートフォンやネットフリックスが当たり前に存在している新世代が誕生しています。

ほんの10年前には全く想像もしなかった世界です。私より数年生まれるのが遅かっただけの子どもとその保護者は、新しい時代の新しい悩みに直面しています。

この情報化社会をネットなしに生きるのは非現実的。しかし、成長し続けるネットを子どもにどう利用させるべきか、わからない。多くの方が、この問題に悩んでいるのではないでしょうか。

 

今、子どものネットの利用に悩んでいる保護者のほとんどは、自身の親や学校の先生から正しいネットの使い方を教わらなかった世代です。高度情報化社会ですから、ほんの数年で世代差が大きく開いてしまうのは当然です。

私でさえ、今「子どもにネットの使い方を正しく教えなさい」と言われても、大変に悩みます。「深夜アニメを小さな子が気軽に見られちゃうなんて、どう対応したらいいの!」と叫びそうになります。

 

 

なぜ依存症になったのか

私の話は、少しだけ特殊な事情を含みます。しかし過剰に禁止された反動と、ドーパミンを手軽に分泌できてしまう手段に出会ってしまったこと。この2つは、多くの依存者と同じ原因だと思います。

私がネット依存になったのは、小学1年生の頃。家の外で誰かと遊ぶことを禁止されていたからです。両親は私が物心つく前に離婚しているので父親はおらず、母親は海外に単身赴任でほとんど家にいませんでした。

 

面倒を見てくれる祖母は心配性で「熱中症になったら、風邪をひいたら、事故に遭ったら」と春夏秋冬、様々な理由を付けて家の外で遊ぶことを禁じました。親友が「遊ぼう」と家まで来ても、「ごめんね」とインターホンで追い返す日々。

だからといって祖母は遊び相手にはなってくれないし、テレビは常に面白い番組を放送しているわけでもない。

ゲームはまだ近くの人と遊ぶ”ローカル通信”が主流で、友達と遊べない私の対戦相手はNPC(コンピュータ)ばかり。NPCの動きにも慣れて、飽きてきます。そうなると、家にあるパソコンで遊ぶしかなかったわけです。

 

周囲の環境が原因でネットに依存した生活だった幼少期

 

すると、どうでしょう。YouTubeは好きなときに好きなコンテンツが見放題で、パソコンのゲームを立ち上げれば、画面の向こうの人がチャットで話し相手になってくれるではありませんか。私のほしかったもの全てが、画面の中にあったのです。

特に、ゲーム内チャットに私は夢中になりました。友達と遊んでいれば、予想していなかった面白い返事や出来事が定期的に発生します。

 

しかし、私は放課後に遊ぶことを禁止されていました。その反動で「誰かと話すのって、こんなに楽しいんだ!」とご飯のとき以外ずっと画面に向かうようになったのです。

それに、海外に単身赴任中の親も予定を合わせて、たまにゲーム内チャットでおしゃべりをしてくれました。

私が一生懸命、印刷したローマ字入力表を見ながら「あいたい!」とか「さみしい」とかをノロノロポチポチとタイピングする度に、「早くなったね」と褒めてくれるのです。本当に嬉しくて、何より幸せで大好きな時間でした。

 

 

 

一番悪い子だった時期

ここから、私の一番荒れていた時期の話をします。お先真っ暗でしたが、今の私は「この先も生きていけそうだな」と思いながら生きているので「あ、こんなに酷くてもレールを外れても何とかなるんだな」という救いになればと思います。

ネット依存の症状が一番ひどかったのは、小学校4年生くらいの時期です。

 

物心ついた頃にはもう、私は祖母から身体的・精神的虐待を受けていました。少しずつ外に出る元気がなくなって、眠くないのに布団から起き上がれなくなって、自分の部屋に引きこもるようになりました。

まだスマホが普及する前でしたから、友達との連絡手段も家の電話しかありません。そうなると、やっぱりネットの中だけが私の居場所でした。

 

ネットの利用をめぐり親と激しく言い合うこともありました

 

1年以上学校に通わなかったらしいのですが、この頃のことはあまり覚えていません。毎日買い足されるコッペパンを1つだけ食べて、現実がつらいから夢の中に逃げようと1日15時間くらい眠り、どうしても眠れないときはずっと画面を見る生活だったのは覚えています。

心配して赴任先から帰ってきた母が困り果てて回線を抜くと、大好きだったはずの親に大声で怒鳴りました。よくある離脱症状ですね。

 

これが一番の大喧嘩に発展し、「あんたが本当に苦しくて本当に駄目なら、私はあんたと一緒に死ぬからね。親ってのは、そういうモンなの。自分の子どもが人を殺して世間様に責められても、親だけはずっと味方なの」と怒鳴られました。

怖かったので、回線をつなぎ直してから何か暴言を吐いて、自分の部屋に逃げました。

まだ”ネット依存”という言葉が普及する前でしたし、不登校の引きこもりでしたから、私も親もどうしたらいいのか、何を頼ればいいのかわからなかったのです。

 

 

依存から脱した方法

結論から言うと、ネットが必要ない楽しいことを始めた依存先を増やす)と、ストレス源(虐待する人)から離れたの2つです。

私のネット依存が悪化したのは、”ストレスからの現実逃避(ドーパミンを分泌して傷を癒したい)”と、”楽しいこと(ドーパミンを分泌する方法)がそれしかなかった”。という2つの要因が重なったからです。似たような要因や環境を持つ方の参考になればと思います。

 

私は音楽が好きでしたが、大好きなVOCALOIDの曲は歌うのがとても難しい曲ばかりでした。なので「上手く歌えるようになりたい」と親に相談して、ボイストレーニングに通い始めました。これが、ネットが必要ない楽しいことです。

外に出れば、道行く人全員が自分を軽蔑するから怖くて出られない。と、本気で思い込んでいた私が、明るい時間に外に出るのは1年以上ぶりだったと思います。

 

 

環境と行動の変化により改善

 

それから数か月して、親が「赴任先に一緒に住んで、夏休み明けから現地の学校に通うのはどう?」と提案してくれました。私はすぐに頷き、ビザを取って海外に行きました。

どうしてもベッドから動けない日があり、転校してからの学校の出席率は8割くらいでしたが、学校の授業も友達と遊ぶのも楽しくて、気が付けばネットに接する時間は大幅に減っていました。このとき、私は小学6年生の2学期を迎えていました。

 

 

今のネットとの付き合い方

あれから数年。私はコンピュータを扱う情報系の大学に進学しました。俗に言う、”社会が敷くレール”に戻ってきたわけです(戻らない選択もできましたが、夢を叶えるために戻りました)。

今目指しているのは、ネットとは切っても切れない職種です。しかし、ネット依存は再発せず楽しく生きています。

 

目指す職種の関係でパソコンやスマホを使う時間は長いのですが、丸一日ほとんど触らなくても気になりません。依存先を増やしたからです。

ネット依存は注目されがちですが、他の依存症と対処法はほとんど変わらないように思います。

 

ネット依存は再発せず今は楽しく過ごしています

 

大切なのは、依存先を増やすこと。*1*2言い方を変えれば、心のよりどころを複数持つことです。この考え方は、人間関係と同じです。学校にしか自分の所属するコミュニティ(居場所)がなければ、学校での立場が少し変わるたびに一喜一憂してしまいます。

しかし、自分の所属するコミュニティ(居場所)が家庭、バイト先、塾、親戚、ネット、習い事……といくつもあれば、どれか1つの立場が少し変わったところでさほど人生に影響はありません。分散投資にも同じことが言えます。

 

私自身、人間関係で同じような経験があります。「どうも最近常に不安だな」と思ったら、所属しているコミュニティが3つ(学校、塾、家)だけでした。

これはまずいと、当時の私はすぐアルバイトを始めました。深い話をする人はできませんでしたが、バイト先という4つ目のコミュニティが生まれただけで私はかなり落ち着きました。

依存先を増やすことは、イコールで自立になります。ゲーム、読書、映画、友達、勉強、テーマパーク。何でもよいでしょう。ドーパミンを分泌する方法を1つに偏らせないことが大切なのです。

 

一番やってはいけないこと

最後に、私が自分の経験を通して、一番やってはいけないことだと感じた原因を振り返って終わります。私がネット依存に陥る原因にもなった過剰に規制(禁止)することです。

「ゲームとの向き合い方を知らないまま、思春期や一人暮らしを始める時期にゲームと出合うと、長く我慢してきた反動でゲームにはまる恐れがある」*3と、依存症予防教育アドバイザーの方は言います。

 

私見ですが、私自身の体験やネット上の経験談を見た上でも、これは理屈の通った話だと思います(残念ながら、まだ「SNSやゲームを過剰に規制された子どもが、反動で依存症に陥りやすい」というような研究や論文は発表されていません)。

ネット依存にならないため・脱するためには、禁止ではなく、依存先(心のよりどころを増やすことが効果的です。

 

どうしてもお菓子を食べてしまう人に「食べるな」と禁止するより、「太りにくいものや体にいいものを食べよう」とか「空腹を忘れちゃうようなことをしよう」と提案する方がうまくいくと思いませんか。

 

一番よくないのは過剰に規制(禁止)することだと思います

 

 

 

 

出典

*1 自立とは「依存先を増やすこと」/全国大学生協連

https://www.univcoop.or.jp/parents/kyosai/parents_guide01.html

 

*2

なぜ「依存先」が多いほど心は安定し、孤独に強くなるのか?/幻冬舎ゴールドオンライン

https://gentosha-go.com/articles/-/41337

 

*3 毎日7~8時間、中2で”ゲーム障害”に…親は叱らず「なんとかなるよ」/西日本新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/e3d54ec6cad013972f5bcdaf4ff9c950f2fddf83?page=1

 

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