スマホ・ネイティブ世代のアナログ行動【エピソード1】
「あっ!聞きたいことがあるので後でLINEするね!」
「うん、分かった!じゃあまた後で。」
このような会話が「ギャグ」ではなく現実になったのはいつからでしょうか?
これは、とある高校の生徒2人が放課後に交わしていた会話なのですが、
「えっ!?だったら今、直接きけばいいんじゃないの?」
と思わずツッコミを入れたくなりませんでしたか?
新連載「スマホ・ネイティブ世代のアナログ行動」は、そのような方々に特にお届けしたいエピソードです!
彼/彼女たちはなぜ、LINEで「トーク」し続けるのか
今日では一般名詞の意味ではなく固有名詞として認知されるまでになったLINEですが、2011年6月のサービス開始から6年。LINEの2017年1月の発表によると今や全世界で利用人数は2億人を超えており、日本ではMAU(月間利用者数)が6,600万人以上※です。その数は日本人口の52.7%にまで及びます。
※LINE 2017年4月-2017年9月公開資料より(参照元:http://ad-center.line.me/mediaguide/)
そのLINEは無料通話やメッセ(チャット)機能を有したアプリとしては後発です。筆者は日常的に10代の青少年と接する機会が多いのですが、先発のチャットアプリであるSkypeやMessengerといったPCでチャットを利用していた世代に広く重宝されているサービスを10代の青少年が日常的に利用しているという話はほとんど聞きません。また、初めて所有する機種がスマホという今の10代(スマホ・ネイティブ世代)では友人の電話番号やメールアドレスを知らないという人が少なくありません。しかし、その場合でもLINEだけは必ず交換しています。
さて、LINEが青少年だけでなく世間一般にもたらした影響と変化は多々ありますが、特筆すべきことのひとつは「携帯メール」を代替したことでしょう。一般的にチャット機能と呼ばれる短文のテキストによるやりとりは、先述したSkypeやMessengerをはじめPCでチャットを利用していた世代では以前から重宝されてきました。
一方、LINEでは日本版のみ「トーク」という名称になっており(文字どおり)家族や知人友人と日常的に対話している感覚を重要視し、とりわけスマホで利用しやすいように設計されています。また「既読無視」や「既読スルー」などが問題になっているように、何かと批判の対象に挙げられる「既読」機能ですが、震災などの緊急時に安否確認として利用できるのがメリットとして知られています。また、もともとは実際にフェイス to フェイスで会話していると必ず相手から何らかの反応があるように、画面上でのやり取り(「トーク」)においてもその感覚を出すにはどうしたらよいか、という発想から生まれたそうです。メールでも相手が読んだか否かを知る方法は存在していたものの、即時性のやり取りには非効率でした。(参考:「今後もなくす予定なし」LINEの既読通知機能を続ける理由を、LINEさんに聞いてみた!)
このようなLINE開発者たちの目論見は見事に当たり、実際に学校現場では休み時間になると隣の教室にいる友人と「トーク」している生徒を見かけます。また、少人数の「グループ」で夜通し「トーク」をすることも少なくないようです。もちろん、ここで言う「トーク」や「グループ」はLINEを介した画面越しの行動です。アナログ世代から見れば奇異に映る光景かもしれませんが、誰しも仲良しの友人宅にお泊りして夜通し話をしていた経験はあるのではないでしょうか?その時の感覚を伴ったデジタル世代の行動だと考えれば、デジアナ世代(デジタル化が始まる時代に育ってきた世代。主に1980年前後の生まれ)である筆者には腑に落ちるところがあります。
「今時の若い者はメールもろくに書けない!」は当たり前?
メール全盛期世代(30代〜40代)から「今時の若い者はメールもろくに書けない!」という批判(不満)が時折聞かれます。筆者にも経験がありますが、件名が無いどころか本文には「明日は何時に集合ですか?」とだけ書かれていて名前もないのです。その当時は、私も例に漏れず同じような不満を感じましたが、考えてみればスマホ・ネイティブ世代の10代は最初からLINEを使える環境にあり、PCメールはおろか携帯メールでさえ使う必要(機会)が無いのです。
先述したように、「LINE」はスマホで利用した際に最高のパフォーマンスを発揮するサービスとして開発されました。とりわけ家族や友人たちとは毎日、気軽にコミュニケーションをすることが「当たり前」という認識に立ち、そのコミュニケーションを円滑に促進するための機能として、PCや従来の携帯電話の主要機能であったメールから、即時的なやり取り(日常の気軽なコミュニケーション)に余計な要素をすべて省いたサービスが「トーク」機能だったのです。
その結果、日本国内外で青少年を中心に幅広い世代において気軽なコミュニケーションの時間が増え、Googleで検索することが「ググる」と称されたように、今や「あとでLINEするね!」と、LINEを介して即時的なコミュニケーションすることが「当たり前」となりました。
しかしながら、
「隣の教室にいるのなら、直接会いに行って話せばいいのに?」
と思ってしまうのも、また自然な感覚でしょう。
スマホ・ネイティブ世代のアナログ行動 その(1)
「スマホ+LINE(デジタル)」を扱っているけど、本質的には「教室に会いに行って会話(アナログ)」と同じことをしている。
この点について、複数人の高校生にヒヤリングをしてみました。
「どちらかの教室に行くと、やっぱりクラスの雰囲気が違うというか、落ち着かないし、廊下にもたくさん会話している人がいるし、話し声とかも気にするから、お互い自分の席にいながらLINEでトークするのが落ち着く。」
この感覚を同年代の生徒がどう思うか、さらに別の何人かに聞いてみたところ、男女を問わず「わかる〜」という同意の声が多数派でした。
また、別の生徒からはこのようなコメントも。
「昼休みにご飯を一緒に食べる仲良い友達やグループはあるんですけど、その子たちとは食べながらあれこれ話をして、食べ終わるとお互いにLINEで別の友人と「トーク」することもよくありますよ。」
実際に昼休みの時間に校舎内を歩きながら観察してみると、一緒にいながらお互いスマホで別のことをしている(LINE以外にもTwitterやInstagram、ゲームなど)生徒の姿がまま見られました。
スマホ・ネイティブ世代のアナログ行動 その(2)
「スマホ機能で検索(デジタル)」するより、「スマホ越しに友達へたずねる(アナログ)」
ある男子生徒との会話中、何か分からないことがあったら「ググる」よりLINEグループでたずねることも多い、という発言がありました。スマホでブラウザアプリを開き、キーワードを入力して検索する(ググる)するよりも、LINEを開いて、聞きたいことを複数のグループに送る方が早いし、確実なのだそうです。グループの中には、質問に対してウェブサイトのURLを貼ってくれたり、スクリーンショットを送ってくれたりする友達がいるとのことです。「もちろん、早急に調べる必要があれば自分で調べますが」と言っていましたが。
筆者は、高校生でようやくアンテナの伸びるPHSを所有していたデジアナ世代です。20文字程度のPメールが1通5円だった時代は当然PHSでネットにつなぐ(という概念すら存在しませんでした)ことはできず、分からないことがあったら誰かにたずねるか辞書や本で調べるしか手段がありませんでした。
他方、スマホという万能機器を10代前半で手にした彼/彼女たちですが、今回の取材を通して、思考や行動そのものは当時の自分と根本的に変わらないことに気づかされるエピソードがいくつも聞かれました。
もちろん変わったこともあるのでしょうが、それは次のエピソードで!