忘れられる権利 Googleが対応 EUデータ保護規則案
2014/5/29、Googleは、欧州連合(EU)で制定されている個人の「忘れられる権利」に対応し、検索結果から好ましくない個人情報の削除を求めることができるサービスを開始しました。EU内のみの対応になります。
EU司法裁判所が、2014/5/13に、Googleに対して不適切なリンクの削除を命じていたことに対応したものです。
これに関する他社の記事はこちら(Huffington Post)(2014/5/30の記事)。
「忘れられる権利」とは
SNSをはじめとする、さまざまなWebサービスが保有する自分の個人データについて、サービス業者に申請すれば削除と頒布中止を求められる権利のことです。2012年1月に公表された「EUデータ保護規則案」の条文に盛り込まれた言葉「rights to be forgotten」が「忘れられる権利」にあたります。
EU成立当初、個人情報保護に関する法制度はEU加盟国ごとに制定されており、バラバラでした。その違いを埋めるために作られたのが「EUデータ保護指令」(1995年採択)で、これがEU内での個人情報保護に関する議論の発端になっています。ただ、この中での「忘れられる権利」は審議中のものだそうです。「EUデータ保護規則案」の第17条として「忘れられる権利と消去される権利」が記されましたが、改定の中で色々削れられていき、最終的には「消去される権利」のみになるのではないかと考えられています。
今回のGoogleの対応
今回の対応で、Googleは削除依頼を受け付けるフォームを設置しました。(フォームはこちら)
EU限定とは言え、膨大な数の削除リクエストが届くことは明らかです。ウェブ上のフォームには「この決定を実施する際に、我々は個々の要求を精査し、個人が持つプライバシーの権利と国民の知る権利の間でバランスを取ることに尽力する。※」としています。これには相当な労力を必要とします。Googleほど巨大な企業だからこそ、名指しで義務付けられたものであり、Googleだからこそ対応できるのではないかと思います。
その他、今回の対応をHuffingtonPostの記事から引用します。
Googleは、見込まれる大量の削除依頼への対応に向け長期的な方策を策定するため、社内上級幹部と独立した専門家による委員会を設置したことを明らかにした。
当該個人に関する情報が古くなっているかどうかに加え、専門職の違法行為や刑事上の有罪判決など公共の利益にかかわる情報がどうかなどについても考慮するとしている。
ちなみに受付フォームでは、EUのみが対象であるため、日本からはリクエストできません(選択ボックスに表示されません)。
日本では
日本でも、国が支援して自治体などで行う「ネットパトロール」の中で見つかった、削除すべき投稿などは、随時「削除依頼」が出されています。「削除依頼」は個人でも各サイトに出すことができますが、ネット上に広まった情報をすべて消すことは現実的ではありません。また、依頼を出しても、その約1,2割は削除されないという実態もあります。
ただ、多くの情報は、Googleなどの大手検索エンジンに提示され、そのリンクをたどってたどりつくものです。一部会員制サイト内の情報は検索にはかかりませんが、「オープン」な誰にでもアクセスできる情報は、ほとんど検索エンジンでアクセスできると言っても過言ではありません。また、Googleの検索ボックスには「サジェスト」という機能があり、よく検索されるキーワードを自動で補完してくれます。この機能でも、「個人名」を入力すると、『個人名+中傷するような名詞』を提示することもあります。
これらを考えると、Googleなどの大手検索エンジンプロバイダがこのような大規模な削除依頼に対応することで、不要な情報流出・拡大(頒布)や被害の継続を緩和することができるでしょう。
リベンジポルノに対する法検討の中でも、海外のプロバイダと連携して削除依頼の実施を徹底するという条文案が出ています。
Googleのこのような取り組みが世界中で対応となれば、大きな効果があるのではないかと思います。
※ In implementing this decision, we will assess each individual request and attempt to balance the privacy rights of the individual with the public’s right to know and distribute information.