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市野敬介の市野敬介的こころ ~結婚式場で大人のデジタルマナーを考える~

結婚式場で大人のデジタルマナーについて考えます

 

現在、スマホはさまざまな場面で利用することが増えています。みなさんはスマホの利用時にマナーについて考えたことはありますか?

NPO法人企業教育研究会 事務局長の市野敬介氏によると、友人の結婚式に参加した際にスマホの使い方について思うことがあったとのことです。

今回、お話を伺ってみました。

 

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おそらくほとんどの方が、人生の中で、自分の結婚式よりも他人の結婚式に列席される回数の方が多いと思われます。私も高校時代の友人の結婚式に参加してきました。新郎も新婦も約20年来の友人です。

盛大に祝ってやろうと意気込んで、普段は纏(まと)わないフォーマルな衣装で、名古屋市内の会場へと馳せ参じた時のお話です。

 

「結婚式の間、撮影はご遠慮ください」に、どよめく大人たち

出席者は私の他に約100名。両家の親族や会社関係者も多く、自分よりも年上の人がほとんどで、かなり気合の入った場です。独身の身には応えます。

一緒に列席する高校時代の仲間と再会した後、チャペルへと案内されました。前方から席を詰めて座り、間もなく結婚式が始まります。すると、アナウンスが入りました。「結婚式は約20分間です。その間は、写真・ビデオの撮影はご遠慮ください」との言葉に、会場内は「えっ…」「なぜだ…」とどよめきます。

 

そして、すぐにもう1つのアナウンスが入りました。

 

「ここからは、式場の専属カメラマンが、結婚式の間の撮影をいたします。式が終わり、披露宴が始まる間に、スマホで写真をダウンロードしていただけるように、専用のWebサイトに掲載します。QRコードをお配りしますので、どうぞ記念にダウンロードしてください。」との言葉に「そんな時代か…」と、さらに大きなどよめきが上がりました。世の中、便利になりましたね。

 

新郎と新婦が入場して、一連の結婚式が、恙(つつが)なく進行しました。

厳かな式で、観ている私も幸せな気分です。(何回参加しても讃美歌は後半になるにつれてうろ覚えになってしまうので、次回はちゃんと覚えて参加します…)とはいえ、事前のアナウンスがあったにもかかわらず、スマホを掲げて自分で撮影を試みる不届きな輩もいるわけで。

おいおい、彼らにとっては人生の晴れ舞台なのだよ。一生に一度の儀式の最中に、祝福ではなくレンズの目線を浴びるなんて、それはいい気分じゃないかもしれない。大人が大人として、欲求を我慢できるのか、他者に思いをはせられるかどうかを試されているのだ、と改めて思い知らされるわけです。

 

「初めての共同作業」を見守る、群衆の両手と視線はどこにあったのか。

しばらくして、披露宴会場に案内されました。

新郎新婦の入場、来賓の挨拶、乾杯の挨拶。通り一遍の披露宴のスケジュールが粛々と進みます。そして、やってきました、初めての共同作業という建前のウエディングケーキ入刀からのファーストバイトが行われます。アナウンスがあるやいなや、列席者は我先にとスマホを掲げて前方に群がっていったのです。

 

今日は親友が主役の一世一代の日なのだから、後方で思いっきり祝福の拍手を送ってやりたいなぁ、と思った私の目に映る光景は、ひな壇に群がり両手でスマホやカメラを掲げる人垣でした。

残念ながら、主役の姿はここからは見えません。シャッター音がいっぱい響き、フラッシュが光り、そのわずかな音や光でどうやらケーキにナイフが入ったらしいことがわかります。

手振れを抑えようと掲げたスマホで両手がふさがって、拍手する人も少ない。拍手をするタイミングもわからないよ。披露宴に参加している意義はなんだろうか。そんな群衆の中で「僕は嫌だ!」と不興(ふきょう)を買うようなシャウトもできず、もやもやっとした気持ちが、お酒をあおるペースを上げてくれます。

 

そうだ。いっそのこと、レンズを向けて撮影している間、拍手の音が流れるカメラアプリでも開発しようかしら。問題解決もテクノロジーでチョチョイのチョイですよ。

いやいや、そんな無粋なことでいいのだろうか。よけいにモヤモヤした気持ちになって、お酒のペースがさらに上がります。

 

ドレスコードに加えて、デジタル機器の利用コードを設けるしかなさそうですね。

そんな価値観の板挟みの連続だと気付いた結婚式。そこに決着をつけるのは、主役である新郎や新婦がどのように祝ってほしいのか、という一点の基準だと、おぼろげな意識の中で感じました。

どれだけ結婚式場からルールだけを伝えて列席者にお願いしたとしても、人はその通りには動いてくれず、空気を読まずに逸脱する大人もいるわけです。結婚式場【場】ではなく、新郎や新婦【人】としてお願いすることが重要なんじゃないかと、強(したた)かに酔っぱらいながら学びました。友よ、ありがとう―――

 

 

 

 

この記事をお読みのみなさま。このような話は結婚式に限らず、飲み会やパーティーなどの日常でも、気になったことはありませんか?

 

その場のノリで写真をSNS上で掲載してのタグ付けをされる、いや、そもそも写真を撮っていいかというところも含めて、大人も子どもも、みんな試されている過渡期なのでしょう。

いつも、服装に関して頓着しないことで周囲から顰蹙(ひんしゅく)を買うことの多かった私も、さすがに結婚式はドレスコードを意識して参加します。それは、長年にわたって作り上げられたコード。

それに比べると、デジタル機器が普及してからは、まだ日が浅く、利用コードはあいまいなものです。いつか、デジタル機器の利用コードが自然とできあがる時期が来るかもしれませんが、それまでは【場】に頼らず、【人】として、その場でどのように振る舞ってほしいのか、遠慮なく伝え合うことが求められています。

 

いつか、自分が結婚式や披露宴を行う時は、デジタル機器の利用コードを設定しよう。司会者にアナウンスを委ねるだけではなく、なぜそのルールにしたのかを明確にして、自分の言葉でお知らせすることにしよう、と考えた次第です。

同時に「お前にその日が訪れるのはいつなのか」という天の声が降ってくるわけですが、聞こえないふりをして、本稿を閉めさせていただきます。

 

執筆者プロフィール

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

市野敬介(いちのけいすけ)

NPO法人企業教育研究会 事務局長
千葉県青少年を取り巻く有害環境対策推進協議会 代表
ストップイットジャパン株式会社 STOPitサポーター
全国教室ディベート連盟 副理事長 大会運営委員長
長岡造形大学 非常勤講師

 

NPO法人企業教育研究会は、学校・企業・大学を結び、誰もが教育に関わり、貢献することができる社会をめざして授業づくり、教材づくりを行っています。
https://ace-npo.org/

 

2018年1月1日に、著書『企業とつくる「魔法」の授業』を発売しました。情報モラルに関する授業づくりや教材の事例も掲載されています。
https://ace-npo.org/book/

 

記事担当:青木

 


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