コミュニティサイト等に起因する事犯の現状と対策(平成29年上半期)警察庁
警察庁から「平成29年上半期におけるコミュニティサイト等に起因する事犯の現状と対策」が公開されました。毎年上半期と下半期に分けて公開されており、どのような理由で、どんな事件に児童が巻き込まれているのか、データで確認することができます。
平成29年上半期は平成20年以来過去最高の被害児童数を記録し、犯罪別では児童買春や児童ポルノ関連の事件が増加傾向。9歳女児が自画撮りした裸の画像を男性に送信してしまう、という事件もありました。
また、子どもに対して保護者がフィルタリング利用をさせていなかったり、設定不十分なスマホを使わせたりしていることが事故の発生につながっていると考えられる結果も出ています。
子どものネット利用による被害を防ぐためにも、ぜひ見守る側の大人に読んでいただきたい内容となっております。
コミュニティサイトでの被害者数が年々増加
まずは被害児童数の推移を見てみましょう。
「コミュニティサイト」というのは、掲示板やチャット機能を持った同じ趣味や興味を持った不特定多数の人たちが交流を目的として集まっている幅広いサイトのことを指し、代表的なものとしてはSNSが挙げられます。被害児童数は平成29年上半期には919人にのぼっており、出会い系サイトにおける被害児童者数は減少傾向で、平成29年上半期は13人でした。コミュニティサイトでの被害児童数が増加傾向というのはここ数年変わっていません。
児童買春・児童ポルノ被害が増加
ではコミュニティサイトでの被害児童数が増えているということですが、どのような犯罪が起こっているのでしょうか?その内訳はこちらになります。
「児童買春」「児童ポルノ」が増加傾向であることが分かります。主に13~17歳が被害に遭う傾向で、具体的には以下のような事例があるようです。
【児童買春・児童ポルノ禁止法違反(児童買春)】 被疑者(22歳・男)は、コミュニティサイトに援助交際を求める書き込みをしていた女子児童(16歳)と知り合い、同児童が18歳に満たないことを知りながら、対償として現金を供与する約束をして同児童と淫行したもの。 (5月・愛知県)
【強制わいせつ及び児童買春・児童ポルノ禁止法違反(児童ポルノ製造)】 被疑者(22歳・男)は、コミュニティサイトで知り合った女子児童(9歳) が13歳に満たないことを知りながら、無料通信アプリを通じて、同児童に対し、スマートフォンで自らの裸の画像を撮影させるわいせつな行為をし、同画像を被疑者に送信させる等して児童ポルノを製造したもの。(6月・北海道)
【青少年保護育成条例違反】 被疑者(42歳・男)は、コミュニティサイトで知り合った女子児童(16歳) が18歳に満たないことを知りながら、自己の性的欲求を満たす目的で同児童と淫行したもの。(2月・長崎県)
この中で特に最近急増しているのが、児童の裸の画像を撮影・送信させる「自画撮り」です。情報処理推進機構(IPA)が2017年8月に公開した安心相談窓口だよりでは、急増する被害に対して注意喚起する声明を出しています。
このようなことにならないよう、第三者に見られて困る画像や動画は送らないようにすることや、一度広まってしまったものを完全に削除することはほぼ不可能であることをしっかり理解する必要があります。
複数交流系(SNS等)での被害数が引き続き増加中
続いて、どのようなコミュニティサイトでの被害が多いのでしょうか?内訳を見てみましょう。
複数交流系(TwitterなどのSNS)や、チャット系(出会い目的アプリ)での被害が大部分を占めています。さらに複数交流系やチャット系の内訳がこちら
全被害児童の3分の1強にあたる327人が、「Twitter」に起因して被害となっています。(昨年の266人より22.9%増加)
過去に「お子様の使っているスマートフォンアプリ、それって安全!?」 でも紹介しましたが、Twitterで不適切な単語で検索をすると、容易に不適切なアカウントを見つけることができました。
この記事を執筆中にも「援交」などの単語で検索してみると、問題あるアカウントやメッセージを見つけることができてしまいました。
不適切なアカウントと簡単に接することができるという実態を理解したうえで注意してTwitterなどの利用は行わなければなりません。
次のグラフを見てみると、上記のような被害が発生する原因の1つが見えてきます。
フィルタリングの利用状況
フィルタリングの利用の有無が判明した被害児童のうち、9割以上が被害当時にフィルタリングを設定していません。フィルタリングを利用していなかった理由は「特に理由なし」が約半数で、「子供を信用している」「子供に反対された」といった保護者の回答もありました。
「子供に反対された」という回答があるのは、「フィルタリングはLINEなどの楽しくて便利なアプリを制限してしまう」という誤解があったり、フィルタリングの設定が煩わしいために嫌がる子どもがいたりする、といったことが理由として挙げられます。
また、「特に理由なし」という回答が大半を占めていますが、被害児童の9割以上がフィルタリングをしていないということを知っていたらそのような回答はしないはずです。フィルタリングやネット関連の事故に対して関心・理解が不十分な保護者が多いということを示していると考えられます。
ある保護者の方にお話を伺った際には「大人はネットやスマホのことはよく分からないので、子供にフィルタリングを利用したくないと言われると、言いなりになってしまう」といったことを話していました。
保護者として何ができるか
ここまで読んだ方は、子どものスマホ利用について気をつけようと考えていただけるのではないでしょうか?
では、何に気をつけるべきでしょうか?できることは何でしょうか?ポイントを3つに絞って挙げます。
①実態を知る
まず子ども達の身の回りで起きていることの実態を知ってください。ネットトラブルに関するニュースに目を通してください。事件や事故の事例を知ったら、十分に気をつけるように子どもに伝えましょう。犯罪の事例を知るだけでも回避できる確率が上がります。また、現状を知ることで、対策を講じなければいけないという危機感を持つことができるでしょう。
②フィルタリングの利用を
フィルタリングが何故必要なのか?どのように設定したらよいのか?といったことは、例えばi-フィルターを販売するデジタルアーツのページなどで詳しく解説されています。フィルタリングを設定して有害情報をブロックし、危険が潜むアプリ利用制限も実施しましょう。それでもTwitterやLINEなどの人気アプリ利用を制限することは難しいかもしれません。ほとんどの友人が利用している中では完全に利用禁止にしてしまうことは現実的ではありません。
そのような場合は、弊社が提供するスマホアプリ、子どもセキュリティ「Filii」を利用すればTwitterやLINEを使いながらも、どのような相手とつながっているかを確認することができます。危険なやり取りが行われているようであれば、お子様のプライバシーを守りながらも危険を察知することが可能です。
③家庭でルールを設定する
怪しいサイトやアプリは利用しない、何か問題が起きそうになったらすぐに相談するように伝える、知らない人とやり取りしない、自分が写った画像や動画を安易に送らない、などのルールを家庭で設定しましょう。こうしたルールを設定することは、犯罪から身を守るだけでなくネット依存やネットいじめなどのその他のトラブルを避けるためにも重要です。
現状に対する関係団体の取組み状況
現状に対する各団体の取り組みも進んでいます。2017年7月には「青少年ネット利用環境整備協議会」が設立されました。これはコミュニティサイトに起因する児童被害を防止するための対策事例や運用ノウハウなどを共有し、青少年が安心・安全に利用できるインターネット環境を整備することが狙いです。上記のグラフにも登場した「LINE」や「ひま部」も参加しています。Twitterも参加を前向きに考えていると報じられており、今後の取り組みに期待したいところです。
また、Twitter社については2017年10月12日に「日本における児童の性的搾取へのTwitterの取り組みの新しいご報告」と題して、大規模に対応を実施したことを伝えています。児童の性的搾取活動を行っているアカウントを大量に凍結したとのことです。
その他にも警察と関係事業者が協力しての広報啓発活動、警察によるサイバーパトロールなどが継続して行われています。
弊社も、子どもセキュリティ「Filii」の普及に努めると共に、学校からの要望に応じて情報モラル講演実施、つながる世界の歩き方での情報発信などのCSR活動に取り組んでいます。
まとめ
警察庁が毎年上半期と下半期に発表している「コミュニティサイトに起因する事犯の被害児童の状況」について紹介いたしました。
ここ数年はコミュニティサイトでの児童被害が増加しています。被害の多くは複数交流系(SNS)が原因となっており、最近では「児童ポルノ」「児童買春」といった性的搾取に関する事件が増加中です。
被害児童の状況を調べるとフィルタリング利用率の低さや、保護者がネットやスマホについて理解してないことや、安全への取り組みが行えていないことが見えてきます。
多くの団体が状況改善のためのさまざまな取り組みを行っていますが、保護者の意識を改めて、実際に対策を講じることも重要です。「ネットのことはよく分からない」「うちの子なら大丈夫」という考えでは子どもを守ることはできません。子どもに自由にスマホを使わせてしまっている場合は、保護者は行動を改める必要があります。