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亡くなった者達の足跡から見えるもの

日本国内の自殺者数は10年前には年間3万人を超えていましたが、10年連続で減少し2019年は約2万人となりました。しかし、先進国の中では自殺率は高く、より一層の対策が必要とされています。

今回の記事では、対面からSNSまで、各種形態の相談業務に関わった経験のある産業カウンセラーの石澤章二氏に、自殺に至るまでの過程で周囲の人間が出来ることなどについて執筆していただきました。

 

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みなさんは自殺に至る軌跡についての調査結果がある事をご存知ですか?

自殺に至る軌跡を知ることで、「自殺の防ぎ方」として見えてくるものがあります。

本記事では、自殺の軌跡調査の結果をシェアして、「どうやったら自殺が防げるのか?」ということについて書いてみたいと思います。

 

自殺は単一の理由で起きるものではない

 

自殺の危機経路

 

自殺で亡くなつた523人の、その一人ひとりの亡くなるまでの軌跡こちらは自殺対策支援センター ライフリンクが自死遺族に行ったヒアリング調査の結果をまとめたものです。

 

(参考)特定非営利活動法人 自殺対策支援センター ライフリンク

「『自殺実態白書2013』【第一版】  第1章:自殺の危機経路」より

 

〇の中に書かれているのは自殺の理由ですが、大小様々な理由があります。

そして他の理由とのつながりがあります。

 

このことから分かることの1つに「自殺は単一の理由で起きるものではない」という事があります。

 

例えば「いじめに遭い、学業が不振となり、学校内や家族などとの人間関係が悪化、自殺」であるとか、「パワハラを受けて体調を崩し休職、長期化したため退職、経済的に困窮した結果夫婦仲が悪化して離婚、追いつめられて自殺」など、様々な要素が重なり結果として自殺につながります。

 

その様な事情があるため「おおごとになる前に対処すれば防げる可能性が上がる」という事が大切になってきます。

言い方を変えると「予防をする事が大切」という事です。

 

3つの予防段階

予防をするという事には段階があり「1次予防」「2次予防」「3次予防」に分かれます。

(順番が逆になりますが、「1次予防」を詳しく説明するため、「3次予防」から説明します。)

 

◯3次予防

「3次予防」は病気になった人が社会復帰をする事を目標としています。

こころの病などで入院した方が、治療・リハビリを終え社会復帰までするところを指します。

こちらは高度な専門性が必要な上、対処に時間がかかるなどの理由があるため一般の方には難しく、予防対象の人数全体から見れば3次予防の対象者の割合は大きくないという特徴があります。

 

◯2次予防

「2次予防」は早期発見を目的とした行為で、スクリーニングシートなどを活用して早期発見を促進したり、相談窓口から専門家につなげたりするなどのやり方があります。

 

3次予防同様に専門性や経験が必要であるため、一般の方には少しハードルが高く、全体的な予防対象人数も3次予防の対象者よりは多いですが、全体の割合としたらそれほど多くはありません。

早期発見を促進したり、相談窓口から専門家につなげたりします

 

 

◯1次予防

最後に「1次予防」ですが、健康の促進と病気の予防を指します。

「健康を維持する事で病気になる前に防ぐ」という事で、高い専門性がない一般の方でも行う事ができ、なおかつ対象となる人数の割合が大きいという特徴があります。

 

この記事をご覧になっている多くの方にとっては、まずは「1次予防」ができる事のスタートラインになるでしょうし、必要とされる人数が多い事から取り組んでくださる方が多く必要な分野であると思います。

 

では「1次予防」で自殺を防ぐためには何をするか?

という事ですが、今回は2つ挙げたいと思います。

 

1次予防で自殺を防ぐためにできること

それは

①周りの人の「いつもと違う」に気づき

②専門家や専門機関につなげる

という事です。

 

これは内閣府が進めている「ゲートキーパー」の考え方で、分かりやすいので紹介させていただきます。

 

(参考)ゲートキーパー養成研修用テキスト(第3版)「2.ゲートキーパーとは (PDF:384KB)」より

 

①周りの人の「いつもと違う」に気づくこと

まず①についてですが、気持ちが落ち込む時は行動に表れるものがあります。

例えば、

・表情が暗い、声に元気が無い

・いつもよりミスが多い

・発言がネガティブ

・目の焦点が定まっていない様に見える

・いつもよりボーっとしている事が多い

などなど。

見た目に「元気が無い様子」を感じる時があります。

 

そんな時に「どうしたの?」「何かあったの?」と声をかけてあげてください。

 

「何でもない」という返事が返ってくる事もありますが、それはそれでOKです。

「あなたの事を気にしていますよ」というメッセージを伝えてあげて欲しいのです。

 

「実は…」と胸の内を話す時もありますが、そんな時は相づちをうちながらお話を聞いてあげてください。

無理の無い範囲で結構です。

 

私が相談員として相談を受けている時に、30分~1時間ぐらい世間話をしただけで「スッキリしました。ありがとうございました」と相談が終わることがよくあります。

この時に「問題は何も解決していない」にもかかわらずです。

 

「問題は解決してないですがいいですか?」と伺うと「さえぎらないで話を聞いてくれたのでそれがよかったです」ということを言われました。

まずはさえぎらないで話を聞く、ということが大切です。

 

お話を聞く時間が多くとれなかったり、長い時間聞いていて辛くなったりした時は「あなたのお話しっかり聞きたいからまたの機会にちゃんとお話しない?」

と言ってみて、また別の機会を設定するのも方法の1つです。

 

話を聞くということは気力・体力を使うので、あなた自身が無理のない範囲で対処する事が大切です。

 

②専門家や専門機関につなげること

次に「②専門家や専門機関につなげる」についてですが、問題の解決が必要になってきた時は「無理に結論を出さないで」専門家や専門の機関につなげてあげてください。

 

一緒に調べてあげたり、可能であれば一緒に行ってあげたり、一緒に行けなかった時は「どうっだった?」と聞いてあげたりするとよいでしょう。

最近では、SNSで相談を受け付けてくれる機関もあります。本人が電話や対面での相談をためらっている場合は、このような相談先を紹介してあげるのもよいと思います。

 

SNS相談 – 厚生労働省

 

上記のSNSでの相談とは異なりますが、私は学生対象のSNS相談に関わったことがあります。学生は非常に反応がよく、期間中に何度も訪問してくれた子もいましたし、期間の終わりには多くの「ありがとう!」のメッセージをいただきました。

 

実際に相談対応をした結果、SNSでの相談はとても必要とされていると感じましたし、今後ももっと広がってほしいと思いました。

 

これら①、②のような対応が考えられますが、「ストレス発散のために気晴らしでもすればいい」というアドバイスをしないように気をつけてください。そもそも「ストレス発散のために何かする事」には気力・体力が必要です。

元気がなくなって気力が落ち込んでいる人に、気力・体力が必要な事を勧めるのは酷な事です。

 

ですから、具体的な対処が必要になった場合は「無理に結論を出さないで」専門家の方につなげてあげた方が「こじれずに」より良い対処ができる可能性が高くなるかと思います。

 

以上が自殺予防のための対処の考えになります。

 

ここまで「どうやったら自殺が防げるのか?」について説明させていただきました。日本での自殺者は最近減少傾向にありますが、まだまだ毎年多くの方が自ら命を絶ってしまっています。私自身も産業カウンセラーとしての取り組みを通じて、1人でも多くの人の命を救っていければと思います。

 

 

 

執筆者プロフィール

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

石澤章二

 

1973年生まれ、静岡県島田市出身。警備会社にて現場責任者として勤務の後、製造業の上場企業内グループ会社へ転職する。職場の人間関係に苦しんだ経験や、メンタルヘルス不全での休職を体験。克服後、人間関係で悩む人々の支援をすべく、産業カウンセラーとして独立。現在の相談員としての活動は、電話・メール・SNSを使った相談活動に関わっており、その中でもSNS相談では国の機関の研究事業に関わるという経験を持つ。

 

 

 

記事担当:青木


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