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「インターネット利用アドバイザー」ってどんなことをするの? 一般財団法人インターネット協会の取り組みシリーズ(3)

 

インターネット利用アドバイザー(以下、アドバイザー)について紹介するシリーズの第3回をお送りします。今回はアドバイザーの資格を持ったメンバーがどのような活動をしているかの一例を紹介します。ご紹介する大久保真紀氏は子育てをしている視点を自分の強みに変えながら、情報モラル啓発に取り組んでいるそうです。

 

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大久保真紀氏にお話をお聞きします

 

特集の第3回を担当させていただきます第4期生の大久保真紀です。

シリーズ第1回の記事でこのような説明がありました。

 

アドバイザーはどのような活動をしているのかというと、2パターンあり、バリバリに講演等の活動をしているか、していないか、に分かれています。

 

自分でバリバリというのも気が引けますが、私は前者であり「インターネット利用について安心・安全の観点から適切なアドバイスが行える人」として講演をメインに活動しています。学校での児童生徒向け、PTAだけでなく下は保育園児から上はシニア世代まで幅広い層にお話をさせていただいています。

その講演の場でも依頼者などから「なんでこの仕事をすることになったの?」と問われることも多い昨今です。

そのあたりから以下のような流れで、皆さまにアドバイザーとしての活動をお伝えしていきます。

 

・自己紹介(バックボーン)

・なぜアドバイザーを目指したか

・アドバイザーとしての活動

・これから何をしていきたいか

 

自己紹介(バックボーン)

いまから20年ほど前、インターネット協会の前身である電子ネットワーク協議会に関わる職場で働きはじめました。その数年後の2001年から、現在のインターネット協会が事務局を務めるインターネットホットライン連絡協議会(インターネット関連の相談・通報ポータルサイト)の仕事が主となり、インターネットトラブル相談対応やサイト運営を現在も業務としています。

その間には、インターネットを利用する方のためのルール&マナー集やフィルタリングの普及啓発などにも携わっていました。

 

なぜアドバイザーを目指したか

今から10年前、2008年3月に認定を受けました。アドバイザーに挑戦しようと決めたのは2007年春、転機は仕事ではなく、プライベートで子どもに恵まれたことでした。

この頃「子どものインターネットトラブル」について、さまざまなどころで問題が取り上げられるようになりました。ネットトラブル相談を受けていた私自身も子どもからの相談も増え危機感を持っていました。その問題を自分の子どもに当てはめるようになり、自分の持っている知識が活かせるのではないか、子どもたちが安全安心してインターネットを利用できるような環境作りに貢献したい!と強く感じるようになり、インターネット利用アドバイザーを目指すことに決めました。

 

仕事をしながら初めての子育て中ということもあり、アドバイザーを目指すことは大変でしたが家族やまわりの協力のおかげで無事「インターネット利用アドバイザー」になることができました。

 

アドバイザーとしての活動

前段では触れなかったことですが、結婚を機に東京から地方都市に転居しました。つまりアドバイザーとなったものの、この町に仕事の面で頼れる人はいませんでした。

一方、子育ての面では外に出ることが増え、ママが集まるサークルなどに出入りし友達が増えていくようになりました。そこではママが企画を持ち込み講座を開くようなシステムもあり、最初は聞く側で参加をしていました。しかし、ママたちと話をしていると「お兄ちゃんがずーっとネットの動画を見ているのよ」といった声も聞くようになり、ここで話をするといいかもと感じるようになり、企画を持ち込んで子育て中もママ向けに講演活動を始めることとなりました。これがアドバイザーとしての出発点です。

 

アドバイザーになりさえすれば講演する場や仕事がいただけるわけではありません。こういった場を提供してくれる方々がいなければ、講演は実現できません。この経験で、そうした場を提供してくれる方に感謝すると共に、自分から外へ出て行かないと何も始まらないということを強く感じました。

 

講演デビューとなった「NPO法人多世代交流館になニーナ」
https://ninani-na.jimdo.com/

 

子育てサークルのほかに、子どもの安全のために活動をしているNPOの門を叩きました。

ここでは人との出会いやつながりができるようになり、「子どもの安全」という観点で関わっている人や団体が集まっているので徐々に人の前で話す機会が増えていきました。

講演の機会はママ向けや子ども向けだけが増えたということではありません。シニア世代向けの講義が、自分にとてもプラスになったと感じています。いまではシニアのスマホ利用は当たり前となっていますが、数年前まではインターネットやパソコンは苦手という方が多かった世代です。

よくわからないと苦手意識を持たれている方に対しては「どれだけわかりやすく、楽しく話ができるか」ということが重要になってきます。また、シニアの方々(全ての方とはいいません)は、年齢が下の私に対して、わからないときははっきり「いまのじゃわからない、もっとわかりやすく話して」と言ってくださいました。こちらは「これくらいわかるだろう」という感覚でも、相手がそうであるとは限りません。はっきり言ってくださることで、どこがいけないのかがわかります。そのご指摘に対してどうしたらうまく伝わるのかを考える次に活かすようにしました。

今でも「とてもわかりやすい話でした!」と言っていただくことが多いのは、この経験が大きいと感じていますので、その時のシニアのみなさまには感謝をしています。

 

「わかりやすさ」以外にも自分らしさとして「親目線」も心がけるようにしています。私には現在、小学生の娘が二人いるので、母親としても日々子どものネット利用の問題に直面しています。

子どもを持つ親の視点で「いま、子どもがインターネットを使うと何が心配なのだろう?親として何を知っているといいのだろう?」といったことを挙げていき、それに対する答えを話に組み込んでいくようにしています。

この点に気付いたのは、インターネット利用アドバイザーの研修でした。アドバイザー三人(うち一人が私)が、デモ講演をするといった内容で、他の方の話を聞くことも大変勉強となりました。自分の話を他のアドバイザーに聞いていただいた感想で「母親の視点で話している点が、とてもよかったと思います」という言葉をいただいたのです。自分で話しているだけでは気付くことができなかったので、これが自分らしさなのだと強みにしていくことにしました。

 

これから何をしていきたいか

インターネットホットライン連絡協議会の仕事、アドバイザーとしての講演活動の他に、二年前から、在住している教育委員会の教育委員を務めています。そこでも昨年度からプログラムを策定し、様々な点から関わらせていただいています。

 

長岡市SNSセーフティープログラム
http://www.city.nagaoka.niigata.jp/kosodate/cate03/sns-sp.html

 

そのプログラムの一つである「ネット安心サポーター」養成講座
http://www.city.nagaoka.niigata.jp/shisei/cate02/blog/20171001-2.html

 

この養成講座は、中学校区と地域を単位として「ネットに少し詳しい大人を地域で増やしていこう」というものです。この運営に関わっているのですが、本年度第一回を終え強い手応えを感じています。それは、学校、地域と大人が一同に会する機会を設け、問題を共有できるシステム作りができたことです。

このような新しい活動をいろいろなところで展開していけると少しずつ何かが変わっていくのではないかと思います。これも一人で何かできるものではありません。関わってくださった全ての方に感謝の気持ちでいっぱいです。

 

子どものネット利用についての諸問題は、いろいろな対策を立てているものの特効薬は見つかっていない状況で、今後も見つかるか不透明です。

だからといって何もしないのではなく、自分のできることを根気よく続けることが大切で、それは小さい活動だとしても大きなものに広がっていく可能性があると思います。それは自分自身が子育てサークルからスタートし、いまの活動に繋がっていることで実感していることです。

 

この回では、地方在住のママアドバイザーの活動内容を紹介させていただきました。次回は別のアドバイザーのお話しが聞けるようで、私もいまからとても楽しみです。

 

執筆者プロフィール

 

大久保真紀

1999年より電子ネットワーク協議会(現在の一般財団法人インターネット協会)にて、インターネット利用に関するルール&マナーの啓発、フィルタリング普及啓発などに従事。

2000年12月のインターネットホットライン連絡協議会設立当初よりネットトラブル相談対応やウェブページの作成/情報更新を主な業務とし、現在に至る。

また、2016年4月より長岡市教育委員会教育委員、同年8月より長岡市教育委員会 熱中!感動!夢づくり教育推進会議委員を務めている。

 

 

シリーズ担当:青木

 

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