カスペルスキーのCSR活動紹介【取組み紹介シリーズ[7]】
「ジュニアスマホ検定」や「情報モラル診断サービス」など、インターネットセキュリティに関するCSR活動を進めている大手セキュリティ企業のカスペルスキー。その他にもさまざまな情報モラルの啓発活動を実施している企業です。今回は各取り組み内容について教えていただきつつ、CSR活動に対してどのような考えを持って臨んでいるのか、カスペルスキーCSR担当の籔内氏にお話を伺ってきました。
インタビュー:青木
CSR活動に対する考えをお聞かせください
2014年7月からCSR活動を開始しました。カスペルスキーは「IT上の脅威から世界を守る」(Save the World from IT threats)というミッションを掲げて事業を行っています。そのため、セキュリティ啓発セミナーの実施や啓発ツールの開発などを通じて、さまざまな人々に対してセキュリティ意識の啓発と教育を行うことを、カスペルスキーのCSR活動として定義しました。
CSR活動は「寄付やボランティアをすること」だと考えられがちですが、私たちはそうではなく、事業の延長線上で社会貢献を行いたいと考えています。
また、CSR活動は経費を使うため会社の利益と相反するのでは?と言われることがあるのですが、そうではなく、社会課題の解決と事業活動への貢献は同時に達成できると考えて取り組んでいます。
特に私たちの事業ミッションである「Save the World」は社会課題の解決に直結すると考えており、企業利益=社会の利益、企業活動=CSR活動という認識を持っています。
具体的に行っているCSR活動
セキュリティとモラルのガイドブック
インターネットを利用する人が、安心してインターネットを楽しむために最低限理解しておいてほしいことを書いている30ページほどのガイドブックをPDFで無料公開しています。「子ども向け」「大人向け」といったターゲット設定を特に行っておりませんが、あえて言うのであれば「インターネット初心者向け」でしょうか。A5サイズなので持ち歩くのに便利ですし、章ごとに別れているので好きなタイミングで好きな部分を読んでいただけるようになっています。弊社のチーフセキュリティエヴァンゲリストの前田典彦と(ISC)2 認定主任講師の淵上真一氏が専門家の立場から監修しているため、信頼性の高い内容となっております。
2014年に提供を始めて3年目となり、毎年内容を見直して最新情報に更新しています。PDF版は誰でもダウンロード可能で、冊子で欲しい方はAmazonから10冊、50冊といった単位で購入可能です。ほぼ原価で提供しています。
内容については、ご利用いただいた方から分かりやすくまとまっていると評価をいただき、中学、高校、大学を始め企業や地方自治体から多くの問い合わせを受けています。ある大学では初年次のITに関するオリエンテーションの副読本として採用していただきました。
セキュリティとモラルのガイドブック
https://kasperskylabs.jp/activity/csr/book/
ジュニアスマホ検定
主に小学4年生~中学3年生を対象とした、スマホやインターネットを使う上で必要な知識やモラルをどれくらい習得しているかを測るための無料のWeb検定です。
親子で一緒に受検可能で、受検後には親子で話し合って一緒に家庭のスマホ利用のルールを作ることができる仕組みになっています。
知識やモラルだけではなく、就寝時間や使っているスマホにフィルタリングを設定しているかなど、利用状況が問われる設問も含まれています。
問題は全部で80ほど用意してあり、その中からランダムで25問が出題されるため、繰り返し受けても様々な問題が出題されるようになっています。登録して受検すると紐付けされるため、親子で同じ問題が出題され、後でお互いの解答を確認することができます。
これまでの実施結果を集計していく中で興味深い結果が出ました。例えば「なりすまし」という言葉について、子どもたちは9割正解していましたが、保護者の方々は5割しか正解していませんでした。この世代の保護者はガラケーからデビューをしている方々で、スマホやネットリテラシーの教育を受けてない世代ではないかと推測されます。
ジュニアスマホ検定
情報モラル診断サービス
学校単位、もしくは教育委員会単位で実施していただく診断サービスです。担任の先生が、児童や生徒のインターネット利用状況や知識、モラルの習得状況を測ることができ、情報モラルについて注意すべき児童・生徒を見つけることもできます。Webで実施するため紙を配布するよりも簡単に集計が可能です。
繰り返し実施できるため、1~3学期それぞれで実施し、その間の情報モラルの授業による児童・生徒の習得状況の変化を確認することができます。
2016年6月にリリースした「教育委員会向け管理機能」は、学校単位ではなく地域全体をまとめて管理したいという要望が寄せられたため対応しました。
最近では日本各地でネットに関するトラブルが増えており、まず地域全体の児童・生徒のインターネット利用状況や知識・モラルの習得状況を明らかにし、対策を行うことが求められています。その際にこの「教育委員会向け管理機能」が一つの解決策になると考えています。
「教育委員会向け管理機能」は有料化の予定ですが、2018年3月末まで無償モニターを募集しています。
「情報モラル診断サービス」は、2015年5月のサービス開始以来、全国約300の小中学校で、延べ1万5千人以上が受検しました。これからもできるだけ多くの学校で実施していただけるよう、広く告知を行うとともに設問の見直しや初期設定の簡素化など、システムの改善を加えていきたいと考えています。
情報モラル診断サービス
幼稚園・保育園の保護者向けセミナー
幼稚園や保育園の保護者を対象としたインターネット安全利用啓発セミナー「スマホのある子育てを考えよう」を2014年10月からこれまでに70園以上で実施してきました。
開始当初は無料開催でも実施希望園がなかなか集まりませんでしたが、おかげさまで今では募集開始と同時に多くの園からお申込みをいただくようになりました。「スマホ子守り」という言葉が世間で話題となり、関心が高くなっているのではと考えています。
CSR活動に取り組み始めた当初、中高生向けのセミナーは大手携帯キャリアなどがすでに実施していました。しかし、幼稚園や保育園の保護者向けの啓発活動はほとんど実施しているところはありませんでした。子どもたちがスマホに接するタイミングはどんどん早まっており、また保護者も子育てにどうスマホを関わらせるかで悩んでいるという話を聞き、幼稚園や保育園の保護者向けの啓発活動を開始しました。
私たちは「スマホを使いましょう」とか「使ってはいけません」という話をしているわけではありません。「現実にスマホがある中で、どのように利用するか、また利用しないのかを一緒に考えていきましょう」というスタンスで取り組んでいます。
そのため、こちらから押し付けるのではなく、自発的に出てきた意見を吸い上げて、最終的には「家庭のネット利用に関するルールを作りましょう。」と提案しています。
幼稚園、保育園、こども園の保護者向けセミナー
今後の展望
「情報モラル診断サービス」は現在提供している「小学生・中学生向け」の他に「中小企業向け」「小中学校の教職員向け」「幼稚園・保育園の保育士、職員向け」などさまざまな対象に提供を計画しています。設問のシチュエーションをそれぞれの状況に落とし込むことで当事者意識を持ってもらうことが狙いです。対象者は違っても、身につけるべき情報セキュリティの知識やモラルの本質は同じです。どれだけ我が身のこととして考えていただくかがポイントで、そのためにこれからも対象者それぞれに適切な診断サービスを提供していきたいと考えています。
おわり
カスペルスキー社CSR担当の籔内氏にお話を伺いました。いずれの取り組みも現代の情報セキュリティやモラルの啓発活動に非常に有効なものであると感じました。
今回紹介したものの中には無料で気軽に利用可能なものもあります。ぜひ多くの人に利用していただき、安全安心なネット生活を過ごすために活用していただければと思います。