若年層(主に高校生)による日常的なスマホ生配信~そのメリット/デメリット
携帯の電波が4Gから5Gになり、通信速度が今の100倍になると言われているこのご時世、文字や写真だけでなく、音声や動画によるコミュニケーション手段が私たちの生活に浸透してきました。
その中でも「生配信」と言われるカテゴリーがあるのを皆さんはご存知でしょうか?今日では、中学生や高校生、大学生といった一般的な若年層によるスマートフォンを用いた生配信を、様々なメディアで見られるようになりました。そこで今回は、普段から映像制作やWEBサイト制作に携わっている、右田仁輝氏に「生配信」の現状を踏まえながらメリットとデメリットについて解説していただきました。
そもそも「生配信」ってどういうこと?
「映像配信」と言うと「YouTube」であったり「ニコニコ動画」といった、動画共有サービスと言われるものが一般的に認知されていますが、その中でも「生放送(生配信)」をすることができるサービスのことを本記事では指します。
生配信するためには本来であれば、カメラを買い揃えケーブルでスイッチャーに接続し、コンバーターで配信用パソコンに入力をし…などという必要がありますが、今では、スマートフォン一台でカメラの機能はもちろん、マイクやテロップ処理など、一連の作業がオールインワンでできてしまうのです。
どんなメディアを使って生配信?
生配信に対する敷居が下がっているのは前述した通りですが、それではどんなメディアで生配信をすることができるか皆さんはご存知ですか?以下は一部ですが、生配信ができるメディアについてリストにまとめてみました。
Facebook(Facebook Live)
Twitter(Periscope)
Instagram(LIVE機能)
radiko
LINE LIVE
Twitcasting
Twitch
SHOWROOM
Freshlive
などなど
なんと、有名なSNSの多くがライブ配信機能をサポートしているのです。
私たちが普段使っている動画共有サービスは、当然のように生配信機能をサポートしていますし、FacebookやTwitter、LINEなどの生活と密に関係しているSNSでも生配信ができるようになってきています。
様々なサービスで生配信機能をサポートしているわけですが、それでは「生配信」をするメリットとはどのようなものでしょうか?いくつか挙げてみたいと思います。
メリットその1: 情報の発信を容易にすることができる
生配信という「リアルタイムの情報発信」ができるということで、情報発信が格段にしやすくなったのが大きいと言えます。「約3600ページの文字と画像で記載されたWEBページを動画に置き換えると、約1分で同様の情報を伝えることができる」という統計もあれば、先に触れたように通信速度も上昇していることからまず、「動画」を用いて情報発信をするということが世間では一般的になりつつあります。
また、スマートフォンを片手に現場をリポートしながらSNS上で生配信をするということもできるようになりました。一見すると雑に感じるかもしれませんが、一定の人たちに伝えるには短時間で多くの情報を伝えることができる効率的なメディアとも言えるでしょう。
(参考)
btrax – 動画マーケティングの威力が伝わる統計と動画作成5つのポイント
メリットその2: 「教育」も生配信
生配信といえば、災害時の報道目的やエンターテイメント目的での利用が多く見受けられます。中には「ライブコマーズ」といって、メルカリやBASEが提供するサービス上で、売り手が生配信を通して販売していく「通販番組」のような取り組みもありますが、「教育」の分野でも生配信は力を発揮しています。
「Schoo(スクー)」というサービスは、生配信を通してプログラミングから政治・経済の話題など、様々なカテゴリの勉強をすることができるサービスです。Schooが提供している授業(生配信)は、基本的に無料で登録し受講することができます。生配信の特性を生かして、登壇している講師に質問のコメントを送ることもでき、本来の学校での授業と変わらないインタラクティブな教育を受けることが可能になります。
(参考)
・BASE LIVE
・メルカリチャンネル
・Schoo
メリットその3: ビジネスにおいても有効活用することができる
個人において、様々な場面で生配信を活用することができ、スマートフォンの普及や通信速度の発展によって私たちの生活にかなり馴染んできた生配信ですが、ビジネスの場面においても大きな役割を果たしています。
生配信ができるメディアは様々ありますが、その全てにおいて利用者層が異なります。年齢も性別も国籍、趣味嗜好など利用するメディアによってそれぞれ特徴があります。それを利用し、受信者に対してメディアの同胞性を利用することにより一斉に情報を配信をすることができます。これにより、宣伝効果も場合によってはテレビCMよりも絶大な効果を果たすこともあります。
さて、ここまで生配信のメリットということで一部を紹介してきましたが、これらのメリットとは裏腹にデメリットも多く存在しているのは事実です。次にいくつかのデメリットを挙げていこうと思います。
デメリットその1: 気軽に発信ができてしまう
これは生配信に限ったことではなく、TwitterをはじめとしたSNS全体で問題視されていることです。SNSの登場により、人々はテキストや画像、動画といった様々な手段を用いて手軽に「発信」することができるようになりました。例えるなら、誰もがいとも簡単に「著者」になれるのです。
私たちが読んでいる本が手元に届くまでには、原稿を確認する「校閲」という工程があり、文章が直される校正作業を複数回経て、はじめて本となります。しかし、一般に知られているようにTwitterをはじめとする多くのSNSには校閲や校正などの工程は存在せず、発信者が投稿ボタンを押せばその発言は世に出て行くことになるのです。
その結果としてヘイトスピーチであったり誹謗中傷、更には殺人予告など、度を超える発信が横行するようになったのも事実です。
さて、生配信に戻りますが、文字によるそのような発信が多々ある一方で、動画や生配信による発信にも同様のことが言えます。テレビの世界で言えば、ディレクターやプロデューサーが影でクオリティコントロールをすることにより「校閲」された情報が配信されるべきところではありますが、発信者が「個人」であるがゆえにそのような工程があるわけではありません。
また、気軽に発信者と交流ができる「双方向性」のあるメディアという点からも、生放送を通して誹謗中傷に晒されたり、発信している場所が特定されることもあれば、逆に自らが誹謗中傷の発信者になることも、従来のメディアに比べてとても容易になったと言えるでしょう。
その結果、撮影が許可されていない場所での配信や、街中での配信による肖像権やプライバシーの侵害、著作権の侵害が問題になり、警察沙汰になったり訴訟問題に発展する事例も多くあります。何でもかんでも、どこでも配信をしていいというわけではありません。手軽に発信することができるようになったからこそ、情報の発信の仕方や発信する内容には気をつけたいものです。
デメリットその2: 通信量不足に陥る
2つ目は発信者と受信者の両方に起きる問題です。生配信というからには映像はつきものになります。文字よりも音声よりも映像メディアの方が情報量(=通信量)がはるかに大きいのは言うまでもありません。
確かに、情報発信の技術や通信速度が著しく発達したからといって、通信量を抑えられるとは言い難いです。気軽に発信することもできれば気軽に受信することもできる。そのため、先述をした通り通信速度が従来の100倍になると言われていますが、今は実際に通信量超過で月初めに早くも制限を受けてしまうという人も少なくありません。
そのため、高画質の動画や生放送をスマートフォンで視聴したり配信する時には、安定した通信環境下(Wi-Fiに接続するなど)で行うことをお勧めします(脚注)。
(脚注) ライブ配信コンテンツには動画だけでなく、音声のみのライブ配信もあります(Twitter/Twitcasting/Spoonなど)。音声配信は動画のストリーミングに比べて同じ再生時間でも約20分の1ほどの通信量になります*。
*動画のストリーミングで720p画質で5分の動画を再生した際の通信量が49MBで、音声ストリーミング(radiko)で10分再生した時の通信量が4MBと言われています。
(参考)
よく使うアプリのデータ通信量はどのくらい? 定番アプリを検証してみた
デメリットその3: 編集ができないメディアであるということ
3つ目に紹介するデメリットは、クオリティコントロールの部分になってきますが、一度配信をスタートさせると止めるまでカメラが動き続け、その映像が世界中に配信されるということです。
どういうことかと言うと、もし仮に配信中にたまたま死体が映り込んだり、裸体など配信中に映ってしまってはよくないものが映り込んでしまった場合どうでしょう?収録をして編集をすると言うことができるのであれば、その部分はカット編集をすればなかったことにできますが、生配信ではそうもいきません。
また、近年ではSNS上の動画共有機能で「バカッター」や「バカスタグラム」など「バイトテロ」と言われるほどに、中高生のアルバイト勤務先や公共空間でのイタズラ動画が多くアクセスされるようになり、警察沙汰にまで発展する問題も最近では散見されるようになりました。
(参考)
ITmedia NEWS – バカッターの次は「バカスタグラム」? 変わる“バイトテロ”の発火点
ここまでメリットとデメリットをあげてきましたが、いずれにせよ「ライブ配信サービス」を使って配信する人も見る人も情報リテラシーはもちろん、持っているガジェットの機能などをある程度知った上で扱うことがベストだと言えます。また、即時性のあるメディアであるという点と視聴者がメディアに参加することができる双方向性のメディアであるという点は、他の文字媒体や既存メディアと違う特徴であり、大きなメリットであるとも言えるでしょう。しかしながら、全ての人がそのような知識を持ち合わせているかといったら、現実はそうではありません。
情報を鵜呑みにするばかりでなく、自ら調べて考えて、そして行動するように心がけると、今使っているサービスや、普段見ている生配信番組などがもっと面白く見えて、何が自分にとって不要な情報なのか、といった「情報の取捨選択」ができるようになるかもしれません。
何事も「ご利用は計画的に」ということで。
(参考)
週刊アスキー – ライブ配信(生放送)はなぜ人気で増えている? 動画とは何が違うの?
執筆者プロフィール
右田仁輝(みぎた じんき) (@jim_stoic)
千葉県市原市でコワーキングスペース「Co-saten」を運営するオープンロード合同会社に所属し、まちづくりの傍、映像制作やWEBサイト制作、講師活動など幅広くクリエイティブ活動を行なっている。
記事担当:青木