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柏市立第二中学校の取り組み紹介【取組み紹介シリーズ[6]】

2017年3月上旬、千葉県の柏市立第二中学校で、ある資料が公開されました。

 

「保護者のための 子どもたちのスマホ・ネットハンドブック ― 上手に使うヒントがいっぱい ―」

 

全8章、47ページに及ぶ内容豊富な指南書。スマホの危険性についての解説や、安心安全にネットに関わるためにはどうしたらよいかについて多くの情報を掲載。本書の内容を理解して取り組めば、子どものネットトラブル防止に大きく役立つ内容となっています。

 

多くの学校でスマホ・ネットに関連するトラブルが絶えず困っている中、この取り組みはもしかしたら他校にとっても参考になることがたくさんあるのではないかと考え、制作のとりまとめ役であり、保護者の立場でもある衣川氏、柏第二中学校の渡辺校長、そして取り組みに関わった千葉大学大学院人文社会科学研究科の飯島氏にお話を伺いました。

 

 

制作のとりまとめ役であり、保護者の立場でもある衣川聡子氏

 

制作に至った経緯を教えてください

学内でPTAとして保護者にネット利用に関する親子アンケートをとったところ、回答の7割を回収できて、子どものスマホ・ネット利用に関する何らかの問題があると回答した保護者は、そのうち8割に及びました。ほとんどの保護者は問題を感じていたわけです。これは絶対に何か対策が必要だと感じました。

 

自分の子どもが通う学校の取り組みを聞いて、ネットリテラシーや情報モラルの教育は徐々に広まっていると感じていました。しかし、私自身がそうした教育を受けてみた際、思っていた以上に色々と学ぶことがありました。具体的には、実際にタブレットを操作して安全のための設定の仕方も学びました。そのときに「今の子どもたちは、こんな危険な世界に今いるのか!」ということを痛感したと同時に、子どもに対するネットの教育や取り組みは進んでいるが、保護者に対しての取り組みが欠落していると感じました。そして、今最も情報モラルについて学ばなければならないのは保護者だということに気づきました。

実際、保護者の間ではネットリテラシーにはばらつきがあります。私は仕事でPCを利用しているので少しはわかるのですが、PCを普段使わない保護者にとっては、メールを送る際に利用する「CC」も「?」なのです。保護者もスマホを使っていながら、ネットリテラシーが高いというわけではなく、子どもをネットのトラブルから守っていくためには弱点だと感じました。

情報モラル教育や、ルール作りは学校や地域として取り組まなければならないと感じています。学校や保護者会では「各家庭でルールを作ってください」とは言いますが、そういわれても家庭で本気でルールを作るのは親子バトルです。以前、自分の子どもと話し合ってルールを設定しようとしたら、「他の家はもっとルールは甘いのに、どうして我が家だけこんなに厳しいのか?」と言われてしまい、苦労しました。

「各家庭でルールを作ってください」ではダメなんです。ネットでつながっている友人と、ある程度の足並みを揃えなければいけません。柏市では利用時間などについてのルールが市内の中学生全体で設定されています。そのルールを最低限設定したうえで、塾に行っているかどうかなどの各家庭の事情に合わせたルールを作る必要があります。

 

苦労した点はありましたか?

制作にあたり、担当する委員会のメンバー以外にも手伝える方を募ろうと、保護者の方々に声をかけてみたとき、呼びかけに応えてくれたのが、過去に自分の子どものスマホに関して何かしら悩んだ経験のある少数の人だけでした。でもリスクに直面したので、とても主体的に考えてくださいました。

一方、関心が薄かったり、理解してもらうことができなかった人もいました。ネットに関するトラブルは起きてしまってからでは取り返しのつかない状況になるものも多く、子どもたちを守る上で保護者の役割は大きいと思いますが、そうした保護者間の温度差があったことは、残念に感じました。

 

逆に良かった点はありましたか?

ハンドブック作る過程で私たち自身が多くのことを学べたことです。実は私もスマートフォンを持つようになったのは今年の4月から。それまでは仕事でPCを使い家でタブレットを使っていたので、ある程度のことは知っているつもりだったのですが、ハンドブックを作る過程で私たち自身がものすごく勉強になりました。

 

あらためて勉強して気づいたのですが、世の中にはネットトラブルから身を守るための仕組みやサービスがたくさん存在しています。でも、すぐ近くに存在しているのに、私たち保護者がそれに気づいていません。だからルールを設定するだけではなく、技術やノウハウも身に付ける必要があると感じました。実は前年度にそのようなことができるようになる講座をPTAで保護者向けに企画し、柏市の補導センターや、そこを通じてNPO法人企業教育研究会(ACE)の講師に来ていただくことができました。それがご縁で、このハンドブックの制作にブレーンとしてご協力いただくことができました。これも非常に勉強になりました。

 

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困難もあった中でなんとか最後まで成し遂げたお話をお聞きしました。続いて柏第二中学校の渡辺校長にお話を伺いました。

 

柏第二中学校 渡辺校長

 

取り組みにあたり、どのような点に気を付けましたか?

ハンドブック作成は、大人が作って子どもに押し付ける形にならないように気をつけるよう伝えました。これは校則を作る際にも気を付けていることです。

生徒会、先生、保護者、といった色々な人の声を取り入れなければならない。そこに参加した人たちに責任を持ってもらうことで効果が出ます。そうしないと守ろうという気持ちにもならない。長い時間をかけて全員で話し合えたわけではないですが、少しの時間でも集まって意見を集約できたのがよかったです。生徒会、先生、保護者それぞれに当事者意識を持ってもらうことができたかと思います。

 

 

この取り組みは今後どうされますか?

実は柏市から声がかかっていて、これを元にしたハンドブックのようなものを教育委員会で作成したいという話があります。我々としては活用していただけるのはありがたいと思っています。

学校のWebサイトでハンドブックはPDFで公開しているので、柏市以外のところであっても是非自由に活用していただきたい。活用いただく学校側で学校名を変更していただいてもよいです。リンクも張っていってもらってかまわない。

ハンドブックの中には柏市が力を入れている補導センターやネットパトロールについての取り組みの紹介部分もありますので、そういった部分も参考にしていただければと思います。

 

現在の課題を教えてください

生徒への教育は徐々に成果を上げていますが、これからは保護者への教育を充実させる必要があると感じています。昔は保護者会などで「スマートフォンを持たせる責任は親にありますよね」と言っても反応は悪かった。当時の反応は「何言っているんですか?」という感じだったが最近は「その通りですね」という雰囲気になってきた。しかし未だにルールを全く設けてない家庭がある。責任は保護者にありますよということは強く伝えています。最近では新入生保護者説明会などで時間をかけて話します。「本当にスマホを持たせるんですか?問題が起きたら親の責任ですよ?覚悟できますか?」と。引き続き保護者には訴えていくことが大切です。

 

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最後に、今回の取り組みに協力し柏第二中学校での啓発講演の実施や、ハンドブックの作成協力を行った千葉大学大学院人文社会学科の飯島氏に、今回の取り組みがうまくいった理由について聞きました。(飯島氏は本メディアでも記事をいくつか書いていただいています)

 

今回の取り組みに関わった千葉大学大学院人文社会科学研究科の飯島氏

 

今回の取り組みがうまくいった理由は何でしょう?

この取り組みがうまくいったのは、多くのキーパーソンが集まったためだと思います。まず情熱と問題意識を持って取り組める人材として衣川さんがいたのが大きい。私が行った情報リテラシー講座のあとにもたくさん質問をしてきましたし、疑問点を解決するために補導センターへ問い合わせるなどしていました。衣川さんの行動に触発されて、柏市補導センター、柏二中の校長先生をはじめ、多くの方々のサポートが得られる体制が整ったのだと思います。

 

今回はそのような人材が集まりました。このような取り組みは非常に大事ですが、他の地域、自治体なども取り組んでいると思いますが、先駆的な活動だと考えます。今回の柏市の場合、これだけのメンバーが揃ったのは、危機意識とパッション(熱情)を抱いた個人がそれぞれの立場で尽力していたからこそ、点と点が線になり、次第にそれぞれの活動が面となったからです。その思いと行動が「ハンドブック」というカタチになって世に出されたわけです。

人と人がつながる「ネット」をどれだけ「ワーク」させることができるか。ネットワークをつなぐためのネットワークが今の時代こそ必要なのかもしれませんね。

 

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以上、関係者の3名にお話を伺いました。

 

今回完成したハンドブックについて

本ハンドブックはどなたでも見ることができるように柏第二中学校のWebサイトにPDFでアップされています。

中身は柏二中仕様になっていますが、どの自治体・学校でも共通するような部分が大半を占めています。ぜひ下記にアクセスしていただき、各自治体・学校で参考にしていただければと思います。

 

柏市立柏第二中学校
http://www.dai2-j.kashiwa.ed.jp/

(保護者のための「子どもたちのスマホ・ネットハンドブック」と書かれている部分にリンクがあります。)

 

章構成は以下の通りとなっています。

 

はじめに
第1章 スマホ・ネットに関する素朴な疑問 Q&A
第2章 子どもたちのスマホ・ネット使用に潜む危険性
第3章 二中の子どもたちをとりまく状況
第4章 安心・安全のための対策
第5章 親・子のつぶやき
第6章 子どもと向きあうためのヒント
第7章 我が家のルール作りに向けて
第8章 困ったときの相談窓口情報
参考文献・参考情報

 

 

1章の保護者の方々から集めた素朴な疑問に答えるコーナー

 

 

 

4章では安全安心のために具体的な機器設定手順が整理してあります

 

 

子どもがネットを利用しているのであれば役立つ情報がたくさん掲載されています。ぜひダウンロードして参考にしてみてください。

 

また、今回の取材を通じて、保護者に対して情報モラル教育を行うことや、各家庭でルールを作成することの重要性と難しさを改めて実感しました。今は各家庭が取り組むべきことがあると同時に、自治体・地域で連携してネットトラブルから子どもたちを守るために動かなければならない状況になっています。

 


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