ネット上の危険って何があるの?その2
そもそも、ネットを利用する上で、こどもや保護者の方々が注意を払うべき危険・リスクには、どんなものがあるでしょうか?
という、前回の続きです。
4.悪評
- どんなリスクか
悪い評判が拡散していくことです。評判リスク、風評リスク、と呼ばれることもあります。リアルでの行動や、SNSやブログでの記事などが発端になることが多いと言えます。しかしながら、悪評の内容がどこまで事実かどうかはあまり関係ありません。曖昧な情報なほど、広がりやすいとも感じます。本人の知らないところで心当たりの無い悪いうわさが立ち、拡散していくこともあります。”ネットいじめ“とも関連が深いリスクです。
このリスクは個人だけでなく、企業に及ぶこともあります。近年、企業では、企業の信用やブランド価値の低下などが発生しないよう、ネット上の評判に大きな費用をかけて注意を払っています。それほど重要なリスクです。
- どういった実害があるのか
前回や”ネットいじめとリアルのいじめ“の回で述べたように、ネット上の情報は「記録」されています。簡単に拡散し、一度大規模に拡散してしまうと、完全に消すことは不可能に近いです。また、この悪評の広まりが大きくなると、これもまた、”炎上“という状態になります。さらなる批判・誹謗・中傷などが殺到する状態です。この状態になると、さらに大きな実害が発生する可能性があります。
関心のあるネットユーザが持つ情報を集め、集合知的に個人情報を(明らかにして)流出される場合があります。抗議やいやがらせの電話が殺到したり、自宅や学校まで押しかけられることもあります。
- 実際の事例
実際の事例を書くとそれが自体が拡散になってしまうのでここでは書けませんが・・・、NHKの番組『新しい人権』と憲法~ネット社会とプライバシー権で、タレントのスマイリーキクチさんの事例が紹介されています。
こういった、ネット上に悪評を書きこむ行為は、”人権侵害”です。プライバシー侵害や名誉棄損などにあたります。ネット上での”人権侵害”は、確認されているだけでも年間600件以上(H24年は671件)発生しています。法務省でデータが公開されています。
5.健康被害
- どんなリスクか
健康被害という表現は微妙かもしれませんが、ネットやモバイルデバイスの使い過ぎで健康を害することです。依存し過ぎた状態は、”ネット依存“と呼ばれ、依存症の一種として診断されることもあります。
- どういった実害があるのか/実際の事例
実害と事例を合わせてご紹介します。
ソーシャルゲームやコミュニケーションアプリ(SNSやLINE等)を夜遅くまで使用してしまうことで、寝不足になります。健康被害とまではいかなくても、学習時間や家族の会話の時間が犠牲になっているとは言えるでしょう。
“SNS(LINE)疲れ” という精神的疲労も問題として挙げられます。リアルタイムに話題に反応しなくてはならず、常にスマホの通知を気にしてしまうという状態です。反応が遅かったり、返信内容が適当な(空気を読んでいない)ものでは、会話から外される可能性があり、その同調圧力というプレッシャーに耐えながら交流するという、厳しい状態です。
身体的には、スマホの使い過ぎで指だけ腱鞘炎になるという話はよく聞くのではないでしょうか。
また、これは2歳児以下を対象とした話ですが、日本小児科医会が乳幼児がスマホで長時間遊ぶことは健全な発達を妨げると、注意を呼び掛ける活動を始めた話を耳にした方は多いのではないでしょうか。
6.高額課金
- どんなリスクか
主にスマホで利用するソーシャルゲームが舞台になりますが、ゲーム上で課金し過ぎて請求が高額になってしまうというリスクです。この件は、「射幸心を煽る」などとして問題になり、消費者庁の指導でGREEやDeNAなどの複数の提供会社が『ガチャ』を廃止したり、類似の仕組みを作らないよう、ガイドラインを策定し、対応しました。
しかしながら、依然として高額課金問題は残っています。
- どういった実害があるのか
数万円、数十万円といった請求が寄せられます。150万円といった事例も耳にしたことがあります。
上記の対応の結果、ゲームによっては未成年の課金に関しては上限を設けたり、課金累計が高額になるとアラートを出すような仕組みが盛り込まれています。
ですが、登録時に年齢を詐称したり、保護者名義のスマホで利用するなどで、制限を回避することがあります。また、保護者名義のクレジットカードなどを勝手に利用することがあり、請求だけでなく、そういった行為を行わせてしまうというリスクもあります。
- 実際の事例
国民生活センターのサイトに、事例が掲載されています(高額課金以外のトラブルも載っています)。
孫が祖父のクレジットカードを盗用した事例が載っており、この事例では、友人にもカード情報を伝え、友人の購入分まで請求されたという事例です。請求は20万円弱でした。
7.個人情報漏洩(ろうえい)
- どんなリスクか
他のリスクとも重なる部分ですが、ネット上に個人を特定できる情報が公開され、それが拡散することです。
名前、電話番号、住所、学校など・・・様々なものがありますが、個人や家族が特定される情報です。
- どういった実害があるのか
今まで紹介してきた、”ネットいじめ“や”悪評“などと重なることで、個人がリアルで誹謗・中傷・抗議の対象になる可能性があります。
また、外見や住所や学校などが分かると、誹謗中傷だけでなく、「かわいいから」、「かっこいいから」といった理由でも、ストーカーや暴行、誘拐などの被害にあう可能性があります。そういった行為が可能になります。
単純に、SNSや掲示板などへの書込みだけではありません。写真や動画の投稿などから分かることもたくさんあります。学校でのイベントの写真/動画、制服姿の写真/動画、通学路の写真/動画、これだけで、どの辺に住んでおり、どの学校にどういった通学路で通っているか、見る人が見れば十分に分かります。
また、”個人情報漏洩“は、こども本人の情報だけではありません。家族の情報漏洩も危険です。
父親の勤務先の会社名、年収、家で言っていた仕事の愚痴・・・これらが個人と紐づく情報とセットになれば、会社で問題になるかもしれません。
- 実際の事例
事例については、”悪評“の事例のように、具体的に示すことができません。NHKの番組を参考にしていただければと思います。
以上になります。
これ以外にもあったり、前回、特に犯罪でまとめてしまった部分などは、個別に取りあげた方がよいかもしれません。
ここに挙げるリスクをご認識いただくだけでも、危険意識は高まるのではないかと考えます。
最近、自治体や啓発団体などで、”情報モラル教育“、”ネットリテラシー教育“などについて、啓発セミナーが多く開かれています。
弊社でも、このような啓発セミナーで直接皆様に最新の情報をお伝えできるよう、自治体や各地の団体などと協力して情報提供できるように相談・計画を進めています。ご興味があれば、是非こちらのお問い合わせ窓口からお声掛けいただければと思います。