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「インターネット利用アドバイザー」ってどんなことをするの? 一般財団法人インターネット協会の取り組み シリーズ(5)

インターネット利用アドバイザー(以下、アドバイザー)について紹介するシリーズの第5回をお送りします。今回はアドバイザーの森井美穂子氏に、インターネット利用アドバイザーになった経緯と、現在の活動について伺いました。

 

インターネット利用アドバイザーに出会って

アドバイザーの称号付与制度が始まったのは、2006年1月。まさにその時、私は9年間勤務したYahoo! JAPANを退職したところでした。私の父親は、その数年前から癌と闘う生活でした。その父の「自宅で死にたい」という希望を叶えるために、私がYahoo! Japanを退職することはどうしても避けては通れなかった選択だったと思います。

そして通院治療や看病に明け暮れる中で、たまたま目にした資格、それが「インターネット利用アドバイザー」だったのです。

この資格を取るには3つの関門を通らなければなりません。しかし最初の2つの関門はすべて自宅で受験できました。その当時の私の状況を考えると有難かったと思います。

 

第1関門はインターネット協会の『ルール&マナー検定』(大人版)をオンラインで受験し、そのスコアが90以上であることが課せられていました。幸いなことに、インターネット協会が発行する『インターネットにおけるルール&マナー』の公式テキストを脇に置きながら、分からない、あるいは回答に自信が持てない内容もテキストを何度も調べながら回答することができました。冷や汗を流しながら問題を解き終わると制限時間ギリギリだったのも、今思い起こせば懐かしいです。

 

第2の関門は論文試験でした。その時のテーマは「子どものインターネット利用における注意点と安全対策」についてだったと記憶しています。

インターネット協会のサイトの「インターネット利用アドバイザー」についての説明には、インターネット利用アドバイザーは「インターネット利用について安心・安全の観点から適切なアドバイスを行える人材」でなければならない旨の記載があります。

その視点で見れば、私のYahoo! JAPANでの経験は大いに助けになったと思っています。

 

Yahoo!きっずから学んだこと

 

 

Yahoo!きっずのトップ画面(https://kids.yahoo.co.jp/より)

 

パソコン通信から始まりインターネット環境が我が家にやって来た頃、アメリカのYahoo!に度々アクセスしていました。そのYahoo!で子ども向けのサービス「Yahooligans(ヤフーリガンズ)」を見つけた時には「なんて子どもに優しいサービスなのだろう」と衝撃を受けました。

本家のYahoo!にあるサービスが、どうして日本に無いのかという疑問を投げたのがきっかけで、1997年1月にYahoo! JAPANに入社、その「Yahooligans」の日本版である「Yahoo!きっず」の立ち上げメンバーとして加わりました。

子ども達が教科書で学習する項目を検索する要求に対して、どんな情報が不足しているのか、更にディレクトリーサービスに登録されたサイト一つ一つが、その内容もさることながら、ページに埋め込まれたリンク先は子ども達が見るのに安全であり適切な内容なのかを、1年365日を通して確認する日々でした。

 

検索する以外にも、子ども達が楽しく学習できるコンテンツ作りにも力を注ぎました。特に思い出すのは2004年のリリース「ネットのマナーABC」です。

子ども達が学校や家庭でパソコンを使う機会が増え始めるにつれて、個人情報の取り扱い方やウイルス対策、著作権に関わる知識、掲示板への書き込みなどに関するマナーが問題になってきました。

〇か×で答えると、その判定結果と解説が付け加えられた内容は、多くの子ども達によって学校や家庭で利用されました。

 

その後、インターネット利用アドバイザーとして「東京子どもネットケータイヘルプデスク(愛称こたエール)」での相談事業に参加してきました。

その根底に流れるのは、Yahoo!きっずの時に常に意識していたこと、子ども達が健全で安全にインターネットを利用することと相通じるものがあると思います。

 

「東京こどもネット・ケータイヘルプデスク」(愛称こたエール)を通して見えること

 

青少年からの相談が寄せられる「こたエール」(http://www.tokyohelpdesk.jp/より)

 

 

「東京こどもネット・ケータイヘルプデスク」(愛称こたエール)は2009年7月に東京都によって開設されました。インターネット協会がその事業を受託し、運営してきました。

東京都内に在住、在学、在勤する青少年本人と保護者、学校関係者を対象にした相談事業です。子ども達がインターネットを使うことで出会ってしまうトラブルについて、できるだけ相談者の立場で、親身になってお話を聴き、そしてトラブルを早期に解決できるような支援を目指し、メール相談や電話相談にあたっています。

子ども達がより気軽に相談できる環境として、今年の5月に期間限定でしたがLINEを利用した相談窓口を設けました。今後も8月1日から2週間の予定で、同じ試みを行っていきます。

 

こたエールで最近目立って相談が増えている事例として、SNS等でつながった相手に、自画撮りを送って起きるトラブルが挙げられます。たとえば、下記のような相談事例です。

 

相談内容(こたエール相談事例「交際」 2017年11月・青少年少女より抜粋)

友達募集アプリで知り合った人と連絡先を交換して友達になった。その人から「写真を見せて」と言われ、写真加工アプリで撮影した写真を送った。すると「かわいいね」と言われ、次に「全身を見せて」と言われた。全身は嫌だと思い、返事をしないでいると、「だめなの?」と言われた。相手とは直接会ったりしていないので、どこの誰でどういう人かはわからない。これからどうしたら良いか。

 

最初に出会った場所は公開の場であり、その後に1対1の対話が始まっています。自分の話に耳を傾けてくれる相手であれば、時間の経過と共に、リアルの世界よりも相手に対する親近感が湧いてくるのかもしれません。

しかしネットで知り合った人を見極めるのは、大人だってとても難しいのです。相手と何かしらの共感を覚えたとしても、それが本当の共感なのかを常に一歩距離を置いて見守って行かなければならないでしょう。

 

この事例では、写真加工アプリを使った写真を送った後に、全身の写真を要求されましたが断っています。断るだけの勇気を奮い起こすのは大変だったに違いありません。であったとしても、相手にすでに送ってしまった写真を取り戻すことは不可能であり、それがどこで、どう使われるのかを自分でコントロールもできないのです。もし下着姿や裸の写真を送ってしまっていたら、想像を超えるような更なる不安感や絶望感に襲われてしまったに違いありません。

 

東京都は2018年2月1日に条例改正を行いました。18歳未満の青少年に裸の画像を送らせる行為は30万円以下の罰金が科せられる犯罪として禁止しました。たとえ下着姿の画像でも同様です。「送らなければ殺す」等と脅されれば脅迫罪が適用されるでしょう。

このような条例改正によって、子ども達がスマートフォンの普及で抵抗感なく自撮り写真をアップし、その結果として容易には消せない心の傷を負ってしまう、この流れを少しでもくい止めるのが目標だと思います。

 

連日こたエールでは、電話の声を通して、あるいはメールの文字に見え隠れする悲痛な叫びに耳を傾けています。勇気を奮ってこたエールに相談して良かったと思える人が増えるように、日々努力を重ねていきたいと思っています。

インターネット利用アドバイザーの活動の場の一つとして、今回はこたエールを紹介させていただきました。

 

 

プロフィール

 

 

 

 

 

 

 

 

森井美穂子(もりいみほこ)

 

Logoとよばれるプログラミング言語のインストラクターを経て、1997年からYahoo!きっずの立ち上げ、学習コンテンツのプロデュース等を担当する。2006年退職後はインターネット利用アドバイザーとして講演活動および東京ネットケータイヘルプデスク「こたエール」において、各種のインターネットトラブル相談を行っている。

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